【黒澤善行の永田町ウォッチ】26日、通常国会が開会

2015年1月29日 22:08

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【1月29日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

今週26日、第189通常国会が召集された。イスラム教スンニ派過激組織「ISIL」によるとみられる日本人殺害脅迫を受け、与野党は、当面、4月の統一地方選をみすえての対決ムードを控え、政府の事件対応を後押しする協調路線で足並みをそろえた。自民党と民主党の国対委員長会談で、事件対応にあたっている安倍総理と菅官房長官、岸田外務大臣の審議出席について、事件の推移に応じて「柔軟に対応してほしい」との自民党の求めに、民主党が受け入れを表明。維新の党など野党も、事件解決に向けて政府に協力する意向を示した。

ただ、野党側は、アベノミクスの是非とその問題点、後半国会で焦点となる集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障法制のあり方、今年発表する戦後70年談話を含む安倍総理の歴史認識などについて質すことで、攻勢を仕掛けていきたい考えだ。また、日本人殺害脅迫事件が収束した段階で政府側の事件対応について検証のうえ、問題があれば国会で質していく考えも示している。

通常国会の前半は、来年度予算が年度内に成立するか否か大きな焦点となっている。政府・与党は補正予算の早期成立と来年度予算の年度内成立をめざしているが、野党側は徹底審議を求めている。予算成立後の後半国会では、農協改革や医療保険制度改革などの関連法案を国会に提出予定のほか、集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障関連法案をめぐる論戦などが行われる。

安倍総理は、通常国会を「改革断行国会」と位置付け、「農業、医療、雇用、エネルギー分野での岩盤規制改革をさらに強力に進める法案を出す」と述べている。
農協改革では、農家の自由度を高めるため、全国の農協組織を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)による地域農協への監査・指導権限を法施行後3年以内に撤廃・任意団体へ転換するとともに、地域農協が「組合員に事業の利用を強制してはならない」という規制も新設する方向で、与党内の議論が進められている。また、農協の設立目的に「農業者の所得の増大」という表現も盛り込むほか、農業者以外の准組合員による農協事業利用の制限、JA全中や農産物を販売する全国農業協同組合連合会などを分割や株式会社化ができる規定も新設する。与党内には政府の農協改革案に慎重・反対論も根強く、政府・与党間の綱引きが行われているようだ。政府は、3月下旬までに農協法改正案を閣議決定のうえ国会提出する方針でいる。

医療保険制度改革については、実質的な混合診療拡大を盛り込んだ健康保険法改正案を国会提出するという。このほか、昨年11月の衆院解散により臨時国会で廃案となった女性活躍推進法案や労働者派遣法改正案なども再提出する。

後半国会の最大焦点と目されている安全保障関連法案をめぐっては、関連法案を遅くとも5月の大型連休明けまでに国会提出することをめざして、2月から安全保障法制整備に関する与党協議会(座長・高村正彦自民党副総裁)を再開し、法案全体像や具体化について固めていく方針だ。

一方、民主党は、「従来の憲法解釈の範囲でやることには賛成の余地がある。しかし、明白な恐れで武力行使することには反対だ。大方針は決まっている」(枝野幹事長)と、政府が提出する安全保障関連法案が昨年7月の閣議決定にもとづく内容ならば関連法案に反対する姿勢を表明している。また、民主党としてのスタンスを明確にするため、集団的自衛権をめぐる党内議論を進めて意見集約を図るとともに、独自の対案を提示したいとしている。ただ、民主党内での意見の隔たりが大きく、細野政調会長が主張する安全保障基本法制定も党内に異論がでている。このため、民主党内でどこまで意見集約ができるかはいまのところ未知数だ。【了】

黒澤善行(くろさわ・よしゆき)/愛知県春日井市生まれ。立命館大学政策科学部卒業、立命館大学政策科学研究科博士前期課程修了。毎日新聞社「週刊エコノミスト」記者、衆議院議員政策スタッフ、シンクタンク2005・日本(自民党系)研究員などを経て、従来の霞が関の機能を代替できる政策コンサル産業の成立を目指す株式会社政策工房の主任研究員に就任。主著に『できる総理大臣のつくり方』(春日出版、共編著)『ニッポンの変え方おしえます―はじめての立法レッスン』(春秋社)がある。政策工房Public Policy Review(http://seisaku-koubou.blog.jp)より、著者の許可を得て転載

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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。

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