【黒澤善行の永田町ウォッチ】当面、綱渡りの国会運営に

2015年1月27日 09:55

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【1月27日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

 安倍総理は、通常国会を「改革断行国会」と位置づけ、当面、景気を下支えする補正予算、および地方創生・女性の活躍推進、成長戦略の断行などを裏付ける来年度予算の早期成立に全力を挙げていく方針でいる。

  4月の統一地方選を前に、来年度予算を安倍内閣の掲げる「地方創生」の財政的な裏付けをアピールしたい与党は、3月上旬までには衆議院を通過させ、来年度予算の成立を確実にさせたい考えだ。また、後半国会の目玉法案とされている集団的自衛権行使の限定容認を含む安全保障関連法案の審議への影響も最小限にとどめたいとの思惑もある。来年予算の成立が次年度にずれ込んだ場合でも、統一地方選の前半戦の告示が終了する4月3日までには成立させることをめざす方針を固めている。

 政府・与党は、衆議院予算委員会での審議日数を14日程度と見込み、順調に進めば、3月10日までに衆議院通過・参議院送付できるとしている。送付日から30日以内に参議院側で議決に至らなかったり、否決された場合、憲法第60条第2項で定める衆議院優越の規定もとづいて自然成立することが可能となる。このことから、政府は、年度内成立しない場合に備え、数日から10日程度の暫定予算案の編成準備に入っている。

 16日に行われた与野党国対委員長会談で、佐藤・自民党国対委員長は補正予算の早期成立や来年度予算の今年度内成立、雇用改革や農業改革、岩盤規制改革などを進める関連法案などの速やかな審議への協力を求めた。これに対し、安住・民主党国対委員長代理は「丁寧な国会運営をお願いしたい」と与党側をけん制した。

 野党側は、地方統一選を前に、政府・与党との対決姿勢を鮮明にしたいとの思惑がある。政府の予算案について、介護報酬の切り下げや子育て世帯への給付金減額を行ったことなどを踏まえ「弱者切り捨て」「社会保障改革が骨抜きにされている」などと批判しているほか、地方創生の具体策を欠いたままでの予算付けなど「バラマキでメリハリがない」とも批判しており、政府側の見解を徹底的に質していきたい考えだ。また、十分な審議日程を求めるなど、早期成立をめざす与党を強く牽制したいとしている。

 さらに、民主党などは、政府が再提出する予定の「労働者派遣法改正案」などを対立法案として位置付けるとともに、集団的自衛権行使の限定容認を含む「安全保障関連法案」でも主張の違いを浮き彫りにしていきたいようだ。

 与党は、統一地方選が控えているだけに、強硬路線をとって野党と全面対決に突入することはなるべく回避したいとしている。とはいえ、予算委員会の審議が紛糾したり、野党の要求などが相次げば、来年度予算の成立が大きくずれかねない。当面、政府・与党は綱渡りの国会運営が余儀なくされそうだ。【了】

 黒澤善行(くろさわ・よしゆき)/愛知県春日井市生まれ。立命館大学政策科学部卒業、立命館大学政策科学研究科博士前期課程修了。毎日新聞社「週刊エコノミスト」記者、衆議院議員政策スタッフ、シンクタンク2005・日本(自民党系)研究員などを経て、従来の霞が関の機能を代替できる政策コンサル産業の成立を目指す株式会社政策工房の主任研究員に就任。主著に『できる総理大臣のつくり方』(春日出版、共編著)『ニッポンの変え方おしえます―はじめての立法レッスン』(春秋社)がある。政策工房Public Policy Review(http://seisaku-koubou.blog.jp)より、著者の許可を得て転載

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