ウェアラブル端末普及に向け開発加速 一方でプライバシー面など課題も

2015年1月19日 11:25

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記事提供元:エコノミックニュース

画像は富士通研究所が開発した指輪型ウェアラブル端末。指輪に付いたモーションセンサーで、空中に数字や漢字を書き、それをデータとしてパソコンやスマートフォンなどに連携できる。親指で入力操作ボタンを押すことができ、片手で簡単に操作できる。

画像は富士通研究所が開発した指輪型ウェアラブル端末。指輪に付いたモーションセンサーで、空中に数字や漢字を書き、それをデータとしてパソコンやスマートフォンなどに連携できる。親指で入力操作ボタンを押すことができ、片手で簡単に操作できる。[写真拡大]

 1月14日から16日の3日間、東京ビッグサイトにて「第1回ウェアラブルEXPO」が行われた。100を超える企業や研究機関が、最新のウェアラブル端末やその技術を展示・発表した。ウェアラブル端末とは、指輪型や腕輪型、眼鏡型、ゴーグル型など、アクセサリーのように身に付ける形のコンピューター端末だ。米Googleが発表した眼鏡型端末「グーグル・グラス」によって認知度が高まり、近年、各国企業による開発が加速している。

 第1回ウェアラブルEXPOでは、医療・健康分野に関する開発が注目を集めた。東京のIT企業が出展した「ワラッテル」は、クリップで上着に装着でき、音声を読み取ってその人の健康状態を確認できる小型端末だ。咳をしている、笑っているなどの音声情報から、体調の変化をスマートフォンなどに伝え、遠く離れた家族の健康状態も知ることが可能となっている。他にも、付けて腕などを動かすとセンサーを通じロボットも同じ動きをするという、大手繊維メーカーが開発した布状センサー端末などもあり、介護現場などでの活用が期待されている。

 すでに実際の医療現場で活用されている産業用ウェアラブル端末もある。ムラタシステムの「手術準備支援システム」は、眼鏡型端末で医療器具や薬剤の名称・保管場所などを管理、確認できる。手術1回ごとで医療器具の種類は変わり、また非常に多岐に渡るが、このシステムによって煩雑だった手術準備が改善され、医師や看護師が手術そのものに集中できるようになった例もあるという。

 他の分野でもウェアラブル端末の開発、導入は進んでいる。1月13日には富士通研究所〈6702〉が指輪型ウェアラブル端末の開発を発表した。ウェアラブル端末の課題の1つとされている重量の面で、10g以下という軽さを実現した。指輪型端末を付けて、空中に数字や漢字を書き、それをデータとしてパソコンやスマートフォンなどに連携できる。未来を感じる技術だ。漢字については個人によって癖などが強いため、まだ修正が必要なようだが、数字は現時点で95%が認識可能となっているという。ヘッドマウントディスプレイとも連携でき、設備のメンテナンス現場、工事現場などでの応用を目指している。

 一方、ウェアラブル端末の実用化には、プライバシー面の保護が担保されるかが問題視されてもいる。体調や経歴、また企業が導入した場合は行動履歴や勤務態度が全て透明化してしまうのではないか、という懸念も強い。そうした法整備なども同時に考えられなくてはならないだろう。

 技術の進歩は、常に人間に便利さや刺激を与えると同時に、技術への依存や誤った使い方という問題もはらんできた。ウェラブル端末の開発・普及は今年を境にこれから数年で大きく進むと見られているが、便利さだけでなく課題にも注視しつつ見守りたい。(編集担当:久保田雄城)

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