【黒澤善行の永田町ウォッチ】来週には、来年予算案が閣議決定

2015年1月11日 18:18

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【1月11日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

 来年度予算案の編成に向けては、12月27日に経済財政諮問会議(議長:安倍総理)と臨時閣議を開き、「2015年度予算編成の基本方針」を決定した。

  基本方針では、財政健全化と経済再生が相互に寄与する「好循環を作り出す」路線を明示し、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を、2015年度に国内総生産(GDP)比で2010年度(6.6%)から半減させる財政健全化目標について「着実に達成するよう最大限努力する」とし、2020年度の黒字化目標についても「堅持する」とした。高齢化に伴い増大する社会保障費については「自然増も含め聖域なく見直す」とし、消費税率10%への引き上げ時に実施する予定だった子育て支援や医療など社会保障充実策の優先順位付けを行ったうえで、「可能な限り、予定通り実施する」とした。その一方で、中長期的な経済発展のため、地方創生、女性の活躍推進などは「強力に推進する」との方針を打ち出した。

 政府・与党は、一般会計総額を96〜97兆円規模とする方向で調整が進めている。来週、来年度予算案が閣議決定される予定だ。

  12月30日、予算案の前提となる来年度の税制改正大綱を、自民党と公明党が決定した。政府は、近く2015年度税制改正大綱を閣議決定し、通常国会に税制改正関連法案を提出する予定だ。

 また、2015年度予算における税収見積もり前提となる「2015年度の経済見通し」については、民需主導による景気回復・個人消費の持ち直しなどを想定して、物価変動の影響を除いた実質成長率を2%前後とする方向で最終調整を行っている。

 最大の焦点だった法人税実効税率(34.62%。東京都の場合35.64%)については、企業の国際競争力向上などを図るねらいから、来年度は2.51%、翌年度までの2年間は累計3.29%引き下げることとなった。税収減の穴埋め財源は、3年かけて、給与総額など企業規模に応じて課税する「外形標準課税」(地方税)を2年間で2倍に拡大することや、過去の赤字と黒字を相殺して法人税額を減らせる「欠損金繰越控除」の段階的縮小、持ち株比率が25%未満の関連会社から受け取る株式配当の非課税制度縮小(現在の5割から2割に)などにより、2.5%分の1.2兆円程度を確保して税収中立を実現するとしている。ただ、最初の2年間は、外形課税の拡充を1.5倍にとどめるなどにより、減税規模が増税分を上回る「実質な先行減税」としている。今後も、「数年で20%台へ引き下げ」を達成するべく、財源を捻出して税率引き下げ幅のさらなる上乗せをめざすという。

  このほか、企業向けとして、給与支給額を増額した企業(2012年度比で中小企業は3%以上、それ以外は4%以上)を対象に、期限付きで賃上げ分を法人事業税で非課税とすることや、企業・人材の地方移転を促す「地方拠点強化税制」を新たに創設した。地方拠点強化税制では、本社機能を三大都市圏以外(東京・中部・近畿)に移転した企業を対象に建物などの取得費用の最大25%の特別償却か最大7%分の税額控除かを選択できるほか、地方で雇用を増やせ1人あたり50万円を税額控除、本社移転は30万円を上乗せすることができる。

  個人向けでは、経済の活性化につなげるねらいから、消費税率10%への再引き上げが延期されたことを受けた措置として2017年末までとなっている住宅ローン減税の適用期限を1年半延長する。

 また、2017年末までの3年間、子・孫への結婚・出産・子育ての費用の贈与(1人あたり1000万円まで)が非課税となる制度を2015年度に導入するほか、住宅資金や教育資金の贈与に対する非課税措置の延長なども盛り込まれた。住宅資金に対する贈与税は、非課税の対象に来年度から太陽光発電・地中熱ヒートポンプ・家庭用燃料電池などの設備設置も含め、非課税枠を最大3000万円(現行1000万円)に拡大したうえで、段階的に縮小し2019年6月末に廃止することとなった。

  さらに、少額投資非課税制度(NISA)に、未成年の子または孫の名義で年80万円までの投資ができ、その運用益には課税しない子供版「ジュニアNISA」を新設した。ただし、名義人が18歳となった年の前年12月31日までの間、払い出しできない。また、若年層による投資促進・裾野拡大を図るねらいから、NISAの年間投資上限額を120万円(現行100万円)に引き上げた。

  このほか、環境性能の高い自動車に適用される「エコカー減税」(自動車取得税、自動車重量税)はより厳しい燃費基準に移行したうえで、2年間続ける。軽自動車税も新たに適用対象となった。

  消費税率10%への引き上げについては、2017年4月1日から行うとし、消費税増税法の付則(景気判断条項)については削除とするとした。これに引き上げ延期に伴い、消費税転嫁法の期限も2018年9月30日に延期することとなった。食料品などの消費税率を低く抑える軽減税率については、「2017年度からの導入をめざす」とし、「早急に具体的な検討を進める」と盛り込んだ。与党は、来年1月下旬をメドに与党税制協議会の下に検討委員会を設置し、対象品目の範囲や、事業者が複数の税率を経理処理しやすくする仕組みなど具体化の検討作業を開始する方針だ。遅くとも2015年秋までに制度案を決定することをめざしているという。

  地方創生の一環として、個人が故郷の自治体などに寄付すると減税が受けられる「ふるさと納税」について、手続きを簡素化するとともに、個人住民税特例控除の限度額を個人住民税所得割り額の2割(現行1割)に拡大した。【了】

 黒澤善行(くろさわ・よしゆき)/愛知県春日井市生まれ。立命館大学政策科学部卒業、立命館大学政策科学研究科博士前期課程修了。毎日新聞社「週刊エコノミスト」記者、衆議院議員政策スタッフ、シンクタンク2005・日本(自民党系)研究員などを経て、従来の霞が関の機能を代替できる政策コンサル産業の成立を目指す株式会社政策工房の主任研究員に就任。主著に『できる総理大臣のつくり方』(春日出版、共編著)『ニッポンの変え方おしえます―はじめての立法レッスン』(春秋社)がある。政策工房Public Policy Review(http://seisaku-koubou.blog.jp)より、著者の許可を得て転載

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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。

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