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【コラム 山口利昭】業務執行役員と非業務執行役員の区別は重要
【1月7日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
5日、イオンさんが大規模なグループ経営体制の改革を発表されました。昨年10月に、当ブログでも取り上げました「イオン監査役アカデミー」は、この経営体制の刷新に呼応したものなのでしょうね。将来の幹部候補者が事業会社の監査役に就任し、非業務執行役員としてスピード経営、効率的な経営を習得するというもののようです。アカデミーは年間100時間ほどかけて監査役業務を学ぶそうで、監査役がキャリアパスの一環として位置づけられているのは画期的だと思います。
さて、年初のネタはガバナンス関連のお話です。社外取締役や監査役、取締役会長等、非業務執行役員としての地位にある役員は、(その名のとおり)会社法上は会社の業務執行は行えないことになっています。しかしホンネで言えば、現実的には「これって業務執行ではないの?」といった経営執行に一部関与している社外役員や監査役の方々もいらっしゃるのではないでしょうか。とくに独立性が認められない社外取締役の方などは、あまり意識もせずに業務執行に関与されている方もおられるような気がします。グレーゾーンに足を踏み込むことへの悩みを抱えている役員さんもいらっしゃるのでは。
このような問題が、会社法違反としてそれほど大事になることはないのかもしれませんが、これが最近のガバナンス改革、とりわけ株主による取締役評価という場面になると結構重要ではないかと思います。業務執行役員と非業務執行役員の区別を明確にしていなければ、「この社外取締役さんは、きちんと自分の役割をわからずに就任しているのではないか、ここの社長さんと適切なコミュニケーションがとれていないのではないか」と機関投資家が疑問を抱くことにつながるそうです(本日、あるアセットマネジメント会社の方との年始挨拶の場で、私がそのような感想を持ちました)。
たしかに、OECDガバナンス原則(和訳)のまえがきには以下のような条項があります。
このようにコーポレト・ガバナンスとは、会社の取締役会が何を行い、いかに会社の価値を設定するか、に関わるものであり、常勤役員が行う日常的な経営管理とは区別されるべきものである。
もちろん理屈の上では社外取締役に求められる役割はいろいろと意見がありますが、すくなくともスチュワードシップ・コードが策定され、機関投資家も中長期における企業の成長に関心を抱くことになった以上、機関投資家が社外取締役に求める役割という点にも配慮が必要です。外部のコンサルタントに求められていることが社外取締役に求められているわけではなく、もっと根本的な会社の基本方針の決定や、経営執行者の利益相反行動の監視といったことに関与して、できるだけ日常の経営執行には関与しない、という姿勢を示す必要がありそうです。質の高い意思決定が可能になるよう、経営会議を傍聴したり、監査役会との協議を行ったり、報酬や人事に関する委員会に出席することも大切とのこと(私自身、どこまで励行できているかは別として)。
元旦の朝日新聞ではトマ・ピケティ氏の独占インタビューが掲載されていましたが、ピケティ氏も(ドイツの労働者参加型ガバナンスを例に出して)資本主義社会の健全な発展のためにコーポレート・ガバナンス改革も一案だとされていましたね。自社のビジネスモデルが、直面する社会的課題をいかに解決することになるのか・・・といった視点も社外取締役に求められているのかもしれません。今後、社外取締役に就任される方のための研修や教育の機会が増えるのでしょうね。【了】
山口利昭(やまぐち・としあき)/山口利昭法律事務所代表弁護士。
大阪府立三国丘高校、大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(平成2年登録 司法修習所42期)。現在、株式会社ニッセンホールディングス、大東建託株式会社の社外取締役を務める。著書に『法の世界からみた会計監査 弁護士と会計士のわかりあえないミソを考える』 (同文館出版)がある。ブログ「ビジネス法務の部屋」(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/)より、本人の許可を経て転載。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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