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東レ、米ボーイングの次は独BMWに炭素繊維を供給 メキシコ工場から
BMWが2013年に発表したコンパクトEV「BMW i3」や写真のプラグインハイブリッドスポーツ「BMW i8」でボディ骨格に炭素繊維を使った[写真拡大]
東レは自動車メーカー、独BMWに炭素繊維を供給すると発表した。そのため300億円を投じてメキシコ工場の生産能力を倍増する。炭素繊維は軽量・強固で燃費改善の切り札として航空機で利用が増え、東レも米ボーイングから1兆円分を受注した。今後は自動車のボディ&モノコック構造材として本格採用が進み、航空機をしのぐ市場規模となるようだ。
業界推計では2020年の航空機向け炭素繊維市場が14年の倍近い年1万5000トン。これに対し自動車を中心とした産業用は年10万トンで炭素繊維の市場として巨大なものとなる。東レは炭素繊維の活用に積極的なBMWとの取引で、自動車市場を攻略する。
BMWは2013年に発表した小型電気自動車(EV)「BMW i3」とプラグインハイブリッドのスーパースポーツカー「BMW i8」で車体の骨格に炭素繊維を使った。世界で強まる燃費規制に対応するため、主力の高級車にも炭素繊維を活用していく方針だ。これまで出資先のドイツ企業から調達していたが、採用車種の拡大でシェアトップの東レとの取引が必要と判断したもよう。
炭素繊維は鉄の4分の1の重量で、その強度は10倍。クルマのボディを構成するモノコックの約20%を炭素繊維に切り替えると車体が約30%軽くなるといわれる。これまでコスト高のため自動車メーカーは、一部の高価なスポーツカーなどにしか使ってこなかった。日本車ではレクサスの限定生産のスーパースポーツ「LFA」(車両価格3750万円)に使った経緯がある。
東レは2017年までに米国にボーイングなど航空機向け高機能炭素繊維工場を1千億円で新設する。ただ航空機向けは高機能なだけに割高となる。そのためBMW向けに、東レが2014年に買収した米ゾルテックのメキシコ工場を活用する。同工場の施設を自動車用炭素繊維生産に適したラインに改良して供給する計画だ。両社は現在、取引内容を詰めており、2015年に正式契約を結ぶ。メキシコ工場は風力発電機の羽根用にコスト安の炭素繊維を生産している。
東レの2014年4~12月期の売上高は前年比111%の1兆5000億円ほどになり、連結営業利益は前年比112%の840億円程度になりそう。ボーイングなど航空機向けを中心に炭素繊維の出荷が増え、自動車向けの特殊樹脂や太陽電池用のフィルムなども、海外向けに売り上げを伸ばした。全体として2ケタの増益となる。
最も好調なのは炭素繊維事業だ。米ボーイング社向けを中心に航空機に使う炭素繊維の出荷が急伸長した。ガスタンクや自動車関連も炭素繊維の需要が増えた。樹脂やフィルムで構成するプラスチック・ケミカル事業は自動車向けの特殊樹脂が北米や中国向けで好調。国内では包装用のフィルムが堅調なほか中国で太陽電池のバックシートに使うフィルムの出荷を伸ばしている。
主力の繊維事業や情報通信材料・機器事業は、ほぼ前年同期並みの水準にとどまるという。繊維事業は円安で輸出採算が改善しているほか、機能性衣料向けの特殊繊維を強化したが、消費増税や天候不順で国内の衣料品が低迷している。情報通信関連も顧客であるスマホメーカーの生産調整などで部材需要が伸び悩んだ。
2015年3月期通期は売上高が前期比114%の2兆1000億円、営業利益は124%の1300億円を見込む。2015年1~3月期も引き続き炭素繊維は好調に推移する見通し。東レは世界の炭素繊維市場でシェア32%の世界シェア首位のメーカーだ。同事業の売上高を2020年前後に2013年の約3倍の3000億円を目指している。(編集担当:吉田恒)
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