東北大、新しい分子磁石の設計方法を開発

2014年12月14日 19:30

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カルボン酸架橋水車型ルテニウム二核金属錯体とTCNQからなるD2A層状化合物と、πスタックによる一次元カラム状格子をもつ電荷移動磁性体[FeCp*2]+TCNQ–の構造と集積反応の概念図(東北大学の発表資料より)

カルボン酸架橋水車型ルテニウム二核金属錯体とTCNQからなるD2A層状化合物と、πスタックによる一次元カラム状格子をもつ電荷移動磁性体[FeCp*2]+TCNQ–の構造と集積反応の概念図(東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 東北大学の福永大樹博士前期課程学生・宮坂等教授らによる研究グループは、鎖状と層状の二種類の低次元磁気格子からなる分子磁性体(分子磁石)を構造的に組み合わせることにより、それぞれの構成格子の構造と磁気的な特徴を併せ持つ新しい三次元格子からなる分子磁石を設計することに成功した。

 通常の磁石は、個々の構成スピンが磁気秩序をもって三次元的に揃うことにより磁石としての性質を持っている。そして、分子で同様に磁石の性質を創ることも活発に研究されているが、二次元層状格子になりやすく、層内と層間の磁気秩序に大きな異方性を持つことや、層間の環境に大きく依存した磁気秩序を示すといった課題があった。

 今回の研究では、電子供与分子として振る舞うカルボン酸架橋水車型ルテニウム二核金属錯体と電子受容分子として振る舞うTCNQ誘導体からなるD2A層状化合物と、パイスタックによるカラム状格子をもつ電荷移動磁性体[FeCp]+TCNQ–を組み合わせることにより、両物質系の特徴をそのまま付加した分子磁石を構築することに成功した。

 今後は、高相転移分子磁性体を探索すると共に、電荷秩序の制御による遍歴電子、構造対称性、局在スピンの協奏現象を示す多重機能磁性材料の開発を進めていく予定となっている。

 なお、この内容は「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。

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