関連記事
理研、怖い体験が記憶として脳に刻まれるメカニズムを解明
我々は、日常のささいな出来事は簡単に忘れてしまう。一方、恐怖を感じた体験は記憶として残る。こういった記憶の形成は「ヘッブ型可塑性」によって形成されるという説が有力だった。互いにつながった2つの神経細胞(ニューロン)が同時に活動し、その結合(つながり)が強化されることによって記憶が形成される、という仮説だ。しかし、この仮説は、実際に記憶を形成している最中の脳内においては、未だ検証されていなかった。
今回、理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター記憶神経回路チームのジョシュア・ジョハンセンチームリーダーらの研究チームは、ラットを使った実験で、恐怖体験の記憶形成において従来の仮説は有力であるものの、それだけでは十分ではなく、神経修飾物質の活性化も重要であることを突き止めた。
研究チームは、光遺伝学とよばれる神経活動を操作する技術を用いて、ラット脳内の扁桃体の神経活動を抑制した。その結果、実際に恐怖記憶の形成が阻害されただけでなく、扁桃体でのニューロン同士のつながりの強化も妨げられ、ヘッブ仮説を支持する結果が得られた。また、光遺伝学によって扁桃体のニューロンを人工的に活性化しても、怖い体験は与えずに音刺激を与えるだけでは、恐怖記憶は形成されないことがわかった。
しかし、扁桃体のニューロンの人工的な活性化に加えて、覚醒や注意に作用する神経修飾物質「ノルアドレナリン」の受容体を同時に活性化させると、怖い体験を与えなくても、恐怖記憶が形成されることが明らかになった。この結果は、恐怖体験の記憶形成においてヘッブ型可塑性は有力な仮説であるものの、それだけでは十分ではなく、神経修飾物質の活性化も重要であることを示唆しているとしている。(編集担当:慶尾六郎)
■関連記事
・理研の研究費概算要求45%減 STAP細胞をめぐり引責
・先天性無汗症の原因遺伝子を発見 治療法確立へ期待
・2時間以内にがん遺伝子変異を検出 凸版の遺伝子解析システムとは
・脳は経験によりどのように学習するのか 理研が新モデルで予測
・用途多彩ミドリムシ バイオ燃料や食品にも
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
スポンサードリンク