東北大、アインシュタインとボーアが論争した2重スリット実験の検証に成功

2014年11月30日 16:08

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(a)と(c)は、アインシュタインとボーアの2重スリット思考実験の模式図。2個のスリットが固定された場合(a)とそれぞれ独立して動くことができる場合(c)。(b)と(d)は、2重スリットを2個の酸素原子に置き換えた本実験の模式図。2個の原子が結合している場合(b)と独立している場合(d)。(東北大学の発表資料より)

(a)と(c)は、アインシュタインとボーアの2重スリット思考実験の模式図。2個のスリットが固定された場合(a)とそれぞれ独立して動くことができる場合(c)。(b)と(d)は、2重スリットを2個の酸素原子に置き換えた本実験の模式図。2個の原子が結合している場合(b)と独立している場合(d)。(東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 東北大学の上田潔教授らによる研究グループは、アインシュタインとボーアが論争していた2重スリット実験を、酸素分子の2個の酸素原子を2重スリットに置き換えることによって実現することに成功した。

 電子や光子などの小さな世界を記述する量子力学によると、物質は粒子としての性質と波としての性質を併せ持っている。この解釈を巡って、アインシュタインは20世紀前半に2重スリット実験を考案し、「反跳運動量を測定すれば粒子がどちらのスリットを通ったかを知ることができる」と主張したが、ボーアは「反跳運動量を測定すればスリットの位置に不確定性が生じて干渉縞は消滅する」と反論していた。当時は実験的に検証することができなかったため、思考実験による論争が繰り広げられた。

 今回の研究では、2重スリットの代わりに2個の酸素原子を置いて軟X線を照射する実験を行った。酸素分子に軟X線を照射すると、高速の電子を放出し、2個の酸素原子に分かれる。その結果、高速電子を放出してから酸素分子が分かれる(つまり2つの酸素原子が受ける反跳運動量が同じでどちらの酸素原子が電子を放出したのか分からない)時は干渉縞が現れ、酸素分子が分かれてから高速電子が放出される(つまり一方の酸素原子のみ反跳運動量を受け取るためどちらの酸素原子が電子を放出したのか分かる)時は干渉縞が現れないことを実証した。この実験結果は、ボーアの反論を支持するものである。

 この内容は12月1日に「Nature Photonics」オンライン版に掲載される。

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