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【黒澤善行の永田町ウォッチ】経済対策の策定・補正予算の編成を指示
【11月23日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
消費税率引き上げ是非の最終決断にあたって、安倍総理がもう一つの判断材料としているのが、11月4日からスタートさせた政府の消費税率引き上げが日本経済に与える影響などを検証する「今後の経済財政動向等についての点検会合」での有識者ヒアリングだ。5回にわたって開催された点検会合は、18日に終了した。甘利経済財政担当大臣は、ヒアリング結果を安倍総理に報告を行った。
点検会合では、意見を述べた識者45人のうち、「一時的なマイナス成長で、決めたことを実行すべき」(西岡アール・ビー・エス証券東京支店チーフエコノミスト)、「再増税に伴う景気下押し圧力には経済対策で対応可能」(平野・全国銀行協会会長)、「少子化対策はここ1〜2年が重要で、先送りは致命的」(大日向・恵泉女学園大大学院教授)など、予定通り消費税率引き上げるべきとの意見が6割強となった。また、景気の先行き懸念が強まっていることもあり、消費税率引き上げの前提として、経済対策を求める声も多くあった。
一方、「日銀の支援の下で経済が成長すれば、税収は増える。増税は不要」(宍戸・筑波大名誉教授)、「消費税増税で経済は痛んでおり、税率を8%から5%に戻すべき」(若田部・早大政治経済学術院教授)、「景気回復の実感が得られるまで反対」(吉川・全国消費生活相談員協会理事長)といった反対・慎重論や延長論も出た。
また、「デフレ脱却を最優先にするべきで、1年半程度延ばす選択肢もある。期限を切り、引き上げ時期を明示して対処するべき」(白石・読売新聞グループ本社社長)、「先送りするとしても時期は明示するべき」(清原・三鷹市長)など、消費税率引き上げ時期を明示すべきだとの意見も出された。
1次速報値が予想を大きく下回り、2四半期連続マイナスとなったことで、2014年度全体もマイナス成長になる可能性があり、景気の後退局面に入っているのではないかとも指摘されている。また、消費税率引き上げの延期でその時点での景気の落ち込みは防げたとしても、景気へのプラス効果は限定的に留まる可能性もありうるとの見方も出始めている。
こうした景気の失速懸念や先行き不安の強まりに対処するべく、安倍総理は、18日の経済財政諮問会議で、地方経済活性化策などを柱とした新たな経済対策の策定と、それを裏付ける補正予算案の編成を関係閣僚に指示した。
具体的には、低所得者向けの現金給付やガソリン・灯油購入費の助成、地方自治体が配る地域商品券の財源手当て、円安・燃料費高騰の影響を緩和する中小企業・事業者対策、エコポイントの復活も含めた住宅購入促進策などが検討されている。公共事業関係については、災害対策に限定するとみられている。
補正予算案の規模は2兆〜3兆円を軸に調整される予定で、財源は好調な企業業績を受けた税収の上ぶれなどを活用し、国債の追加発行は避ける方針だという。【了】
黒澤善行(くろさわよしゆき)/愛知県春日井市生まれ。立命館大学政策科学部卒業、立命館大学政策科学研究科博士前期課程修了。毎日新聞社「週刊エコノミスト」記者、衆議院議員政策スタッフ、シンクタンク2005・日本(自民党系)研究員などを経て、従来の霞が関の機能を代替できる政策コンサル産業の成立を目指す株式会社政策工房の主任研究員に就任。主著に『できる総理大臣のつくり方』(春日出版、共編著)、『ニッポンの変え方おしえます―はじめての立法レッスン』(春秋社)がある。政策工房Public Policy Review(http://seisaku-koubou.blog.jp)より、著者の許可を得て転載
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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