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【人】元NHKアナウンサー宮田修さん
NHKアナウンサー時代は、静かによく通る声と落ち着いた雰囲気で視聴者に安心感を与える、「もっともNHK人らしい人」といわれた宮田修さん。[写真拡大]
■千葉県で宮司、モンゴルで日本語のアイウエオ先生
NHKアナウンサー時代は、静かによく通る声と落ち着いた雰囲気で視聴者に安心感を与える、「もっともNHK人らしい人」といわれた宮田修さん。39年7カ月勤務したNHKを退職し、現在は千葉県長南町と長柄町の32社の神社の宮司を務めている。氏子さんは、およそ1200世帯。春と秋のお祭りを中心に神さまにご奉仕している。田植えなどの農作業で氏子さんたちが忙しくお祭りがない時に毎年、モンゴルを訪ね、ウランバートルの学校で中学生や高校生に日本語を教えている。日本語の基礎や発音、日本の文化、生活習慣などを教え、来年で10年になるという。さらに、年間、50回の全国講演もこなす超繁忙な日々を送っている。移り住んだ千葉県長南町の自宅におじゃました。
ずいぶん広いですね。「最初はこんなに広くなかったのですが、続きの土地を買ってほしいと頼まれて引き受けたら1500坪にもなってしまいました。春から夏にかけて草がどんどん伸びます。草刈は大変ですが楽しいですよ」と微笑む。
長南町からも近い千葉県富里市の生まれで国立埼玉大学教育学部の出身。「地元の小学校の先生になるつもりでしたが、教育実習に行って気の短い私には先生は向いていないと、きっぱり教師の道を諦め、NHKを受けたら採用され、旭川放送局を振り出しに39年7カ月お世話になりました」。
この間、旭川―神戸―福島―岡山―広島―東京―大阪―東京―大阪―東京の放送局で一貫してニュースを担当してきた(厳密には最初の約10年はニュースのほかにスポーツも担当したという)。
阪神淡路大震災のときの報道が強く印象に残っているし宮田さんらしさがもっとも発揮されたと思います。「地震発生は1995年1月17日、朝5時46分でしたね。5時49分05秒からカメラに向かい、午後1時まで一度も席を立つことなく報道しました。あの日1日で13時間あまりカメラの前にいました。もちろん、予定原稿はありませんから画面だけを見ながら自分ひとりですべてを判断し伝えることが求められました」。まさに、力量が問われた超ナマ放送だった。同時にこの報道でニュース報道の宮田さんという名を不動のものとした。
しかし、心の中では、「この報道を担当したことでアナウンサーを辞めることができると思いました」という。ニュース報道アナウンサーとしてやり切った気持ちだったようである。
なぜ、神主さんの道を選ばれましたか。「田舎で晴耕雨読の生活に憧れていましたからNHK時代に古民家を借りて週末などを過ごしていました。この古民家の大家さんが神主さんで後継者がいなかったため後を継いでほしいと懇請を受け、好きな田舎暮らしができて地域にも貢献できるならと引き受けました」。
神主さんの資格はたいへん難しいと聞きますが。「古事記、日本書紀、万葉集などを読み、日本人の伝統的な考え方を学ばなくてはいけません。また、ご神前の作法や祝詞のつくり方などを学びます。難しいことばかりでした。しかし学べば学ぶほど我が国の良さ、日本人のすばらしさを改めて見直すことができました。平成14年春に資格を取り平成15年6月から宮司となって11年です。全国8万社あまりの神社によってつくられている神主本庁に加盟しています」。2~3月は豊作を願っての祭り、秋は豊作に感謝する祭りで春と秋は忙しく、今は正月のお札つくりに追われているという。
毎年、春の祭りのあとモンゴルの新モンゴル高校と付属の中学校で約1カ月、中学生から高校生までの生徒を対象に日本語、日本の生活風習などを教えている。交通費などすべて自費のボランティアである。「とくに、スタンダードの発音に重点を置いて教えているため、向こうではアイウエオ先生と呼ばれています」と笑う。
向いていないと思っていた先生職も年輪を重ねて板についてきたということだろうか。教えた生徒の多くが日本の一流大学に留学、今続々と母国に帰り始めている。中には千葉大学を卒業、モンゴルの財務省に勤めている女性もいるという。「日本の大学を卒業してモンゴルに帰ってくる人が1000人になればモンゴルは変わってくると思います」と。日本とモンゴルがいっそう親密となることに期待している。
NHK時代には、まったく手を触れなかったパソコンは今ではメールから出版の原稿もこなす。NHK時代とまったく変わらぬ健康ぶり。「好きな晩酌を片手に読書をして9時には床についています。空気もいいし健康そのもの生活です」と満足な表情だ。
色づき始めた木々を眺めながら、「日本は今、日本人の和を尊ぶ心を見直す大切なところにきていると思います。先祖があって、いまのわれわれがあり、子孫に引き継いでいくのです。『中今を生きる』という考えを大切にしてほしいものです」。神職の表情が晩秋の夕映えに輝いて見えた。(文=犬丸正寛)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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