【黒澤善行の永田町ウォッチ】安倍総理、衆議院解散・総選挙を表明

2014年11月20日 12:05

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【11月20日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

 18日、安倍総理は記者会見を行い、消費税率引き上げの実施時期を1年半後(2016年4月)に延期して、重要政策の変更について国民に信を問うとともに、アベノミクス・成長戦略の継続是非を問うべく、衆議院を11月21日に解散して衆議院選挙の断行を表明した。

 安倍総理は、消費税率の再引き上げにより「個人消費を押し下げ、デフレ脱却が危うくなる」との認識を示したうえで、経済情勢が悪いときに消費税率引き上げを先送りできると規定した社会保障・税一体改革関連法の景気弾力条項(付則18条)を適用した理由について「デフレを脱却し、経済成長させるアベノミクスを確かなものにするため」と説明した。また、国・地方の基礎的財政収支赤字を2020年度に黒字化する財政健全化目標を堅持する観点から、「18か月後に消費税率引き上げを再び延期することはないとはっきり断言する」とも述べた。

 政府は、安倍総理の最終判断を踏まえ、来年1月召集の次期通常国会に、社会保障・税一体改革関連法の改正案を提出のうえ、速やかに成立を図る方針でいる。その際、財政健全化に取り組む意思を市場に明示し、金利急騰・国債暴落による混乱を未然に防ぐねらいから、景気弾力条項は撤廃するようだ。

 また、消費税率10%への引き上げ時に財源を充てることが前提となっている子ども・子育て支援新制度に関する法律など、社会保障関係法の改正案もあわせて国会に提出する予定だという。

 衆議院選挙は、12月2日公示、14日投開票の日程で行う方針だ。衆議院選挙後、首相指名選挙が行われる特別国会召集や新内閣の組閣など、年内のスケジュールが立て込んでいる。来年度予算編成や税制改正大綱の策定は越年となる見通しだが、作業の遅れを最小限にとどめるためにも、14日投開票とした。

  消費税率引き上げの延期を理由に衆議院解散・総選挙は大義がないとの批判があることに対し、安倍総理は「税制は国民生活に密接に関わっている」「国民生活にとって重い決断をする以上、速やかに国民に信を問うべきだと決心した」「成長戦略を国民とともに進めていくためには、どうしても国民の声を聞かなければならないと判断した」と、重要政策の変更について国民の信を問うのは「民主主義の王道」であり、「景気回復を実現したうえでの消費税率を引き上げる」ことについて理解を求めた。

  安倍総理はじめ与党側は、政権発足直前の成長率や物価上昇率、失業率、有効求人倍率、賃金の伸びなどを示して、民主党政権時代の停滞から飛躍した点をアピールしつつ、デフレ脱却・経済再生を最優先に取り組む「アベノミクス」継続の重要性を掲げて、3分の2超の議席の維持をめざしている。衆議院選挙で自民党・公明党で過半数を維持できなかった場合、安倍総理は、アベノミクスが否定されたとして退陣する意向を示し、強い決意を示した。【了】

 黒澤善行(くろさわよしゆき)/愛知県春日井市生まれ。立命館大学政策科学部卒業、立命館大学政策科学研究科博士前期課程修了。毎日新聞社「週刊エコノミスト」記者、衆議院議員政策スタッフ、シンクタンク2005・日本(自民党系)研究員などを経て、従来の霞が関の機能を代替できる政策コンサル産業の成立を目指す株式会社政策工房の主任研究員に就任。主著に『できる総理大臣のつくり方』(春日出版、共編著)『ニッポンの変え方おしえます―はじめての立法レッスン』(春秋社)がある。政策工房Public Policy Review(http://seisaku-koubou.blog.jp)より、著者の許可を得て転載

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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。

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