【黒澤善行の永田町ウォッチ】女性活躍推進法案と派遣法改正案、審議未了・廃案へ

2014年11月20日 12:03

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【11月20日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

 安倍総理が衆議院解散・総選挙の断行を表明したことを受け、与野党とも公約づくりや選挙準備を急ピッチで進めており、野党間では選挙協力などの模索も続けてられている。解散・選挙モードとなったことで、自民党は、臨時国会中に成立させる法案を絞り込んだ。

 政府・与党は、地方創生の基本理念などを定め、地方での魅力ある雇用創出や結婚・出産・育児の環境整備などを着実に実施するよう客観的指標を盛り込んだ平成27年度からの5カ年計画「総合戦略」の策定を国・地方自治体に努力義務を課している「まち・ひと・しごと法案」、地域支援をめぐる各省への申請窓口を一元化するとともに活性化に取り組む自治体を支援するための「地域再生法改正案」を、21日までに参議院本会議で採決し、成立させる方針だ。

 これに対し、対決姿勢を強める野党は、小笠原諸島周辺海域での中国漁船によるサンゴ密漁問題を受けて、外国人による日本領海内などでの違法操業などに対する罰則強化を図るための外国人漁業規制法改正案や、危険ドラッグの取り締まりを強化する薬事法改正案など、緊急を要する法案などを除いて、国会審議を拒否することで足並みをそろえている。

 参議院自民党は、19日に安倍総理出席のもとで質疑を行い、20日に参考人質疑を行ったうえで採決、21日の参議院本会議で採決するシナリオを描いているが、想定通りに進むかは微妙な情勢だ。

 地方創生関連2法案と並ぶ重点課題に位置付けられてきた、女性の採用・昇進機会を増やす取り組み加速を企業などに促すための「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」についても、与党は、臨時国会での成立を事実上断念した。女性活躍推進法案は、12日の衆議院内閣委員会で審議入りとなり、自民党が12日の衆議院内閣委員会理事会14日の採決を提案したが、民主党など野党側が難色をしめしたため、折り合いがつかなかった。その後も、与野党協議のメドは立っていない。このことから、このまま審議未了・廃案となる見通しだ。

  派遣労働者の柔軟な働き方を認めるため、企業の派遣受け入れ期間の最長3年という上限規制を撤廃(一部の専門業務を除く)する一方、派遣労働者一人ひとりの派遣期間の上限は原則3年に制限して、派遣会社に3年経過した後に派遣先での直接雇用の依頼や、新たな派遣先の提供などの雇用安定措置を義務づける「労働者派遣法改正案」について、与党は、臨時国会での成立を事実上断念した。

 当初、与党は、12日にも衆議院厚生労働委員会で採決する構えだったが、野党の反発により審議が進まなかった。与野党協議の結果、エボラ出血熱への対策を強化する感染症法改正案や、危険ドラッグを規制する薬事法改正案を優先して審議することで折り合った。与党側は、野党の反対を押し切ってまで審議を強行するのは得策ではないと判断した。改正案は、審議未了により廃案となる見通しだ。

 安倍総理の衆議院解散・総選挙の正式表明を受けて、与野党とも選挙モードに入った。国会の残された審議時間は、極めて限られている。衆議院選挙を意識した与野党の駆け引きが続いているなか、重要法案はじめ各法案のうち、どの法案が成立し、何が審議未了により廃案となるのかについてもみておいたほうがいいだろう。【了】

 黒澤善行(くろさわよしゆき)/愛知県春日井市生まれ。立命館大学政策科学部卒業、立命館大学政策科学研究科博士前期課程修了。毎日新聞社「週刊エコノミスト」記者、衆議院議員政策スタッフ、シンクタンク2005・日本(自民党系)研究員などを経て、従来の霞が関の機能を代替できる政策コンサル産業の成立を目指す株式会社政策工房の主任研究員に就任。主著に『できる総理大臣のつくり方』(春日出版、共編著)『ニッポンの変え方おしえます―はじめての立法レッスン』(春秋社)がある。政策工房Public Policy Review(http://seisaku-koubou.blog.jp)より、著者の許可を得て転載

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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。

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