【黒澤善行の永田町ウォッチ】委員長職権で審議が進む労働者派遣法改正案

2014年11月13日 11:26

印刷

記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【11月13日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

 派遣労働者の柔軟な働き方を認めるため、企業の派遣受け入れ期間の最長3年という上限規制を撤廃(一部の専門業務を除く)する一方、派遣労働者一人ひとりの派遣期間の上限は原則3年に制限して、派遣会社に3年経過した後に派遣先での直接雇用の依頼や、新たな派遣先の提供などの雇用安定措置を義務づける「労働者派遣法改正案」が、5日、衆議院厚生労働委員会で実質審議入りとなった。

  廃案に追い込みたい民主党など野党側の主張を取り込んで同法案の成立に道筋をつけるねらいから、公明党が修正案骨子を厚生労働委員会理事会で提示したことで、「法案に問題点があることを認めた」「野党の質疑も一巡していないのに修正案の提示はおかしい」「修正するなら政府が法案を出し直すべき」などと野党側が反発した。公明党が修正案撤回をしてもなお、与野党の協議が平行線をたどったため、渡辺博道委員長(自民党)は、職権で5日の委員会質疑を決定した。

  民主党の枝野幹事長は「重要法案であれば、政府・与党が一致して提出すべきだ。とても正常な審議過程とは言えない」と、与党間で足並み揃っていない状況で法案審議がスタートした点も問題視して、「審議に応じないなら粛々と採決する」と強気の姿勢をちらつかせて強行に審議を進めようとする与党側の姿勢を批判した。

 厚生労働省は、6日の衆議院厚生労働委員会理事懇談会に、労働局が指導する条件として、労働組合が反対するなかで企業が派遣労働者の受け入れ期間延長についての対応方針を説明しなかったような場合とする文書を提出した。これは、企業が労働組合に事情を説明すれば、派遣の受け入れ期間の自由な延長が事実上可能となるような内容で、塩崎厚生労働大臣が5日の衆議院厚生労働委員会で答弁した「企業内の民主主義が成り立たず、労働局が指導をすることは当然」について事実上、訂正するものだった。これに野党側は、猛反発した。

  そのうえ、今週中の衆議院通過をめざす与党は、採決の前提となる安倍総理出席の質疑を7日に行うよう野党に提案した。これに、民主党など野党各党は、与党の強引な国会運営や、大臣答弁と厚労省が提出した資料に齟齬が生じている問題などに反発して、与党提案を拒否した。折り合うことができないまま、渡辺委員長は、ふたたび職権で7日の委員会開催を決定した。

  これにより、7日の衆議院厚生労働委員会は、野党が一斉に審議拒否するなか、与党単独で審議が進められていく事態となった。安倍総理は、民主党などが主張している「派遣労働者の固定化」「派遣労働者の増加」「格差拡大」につながるとの指摘について、「生涯派遣法案との指摘はあたらない。レッテル貼りは不毛だ」と強く批判した。【了】

 黒澤善行(くろさわよしゆき)/愛知県春日井市生まれ。立命館大学政策科学部卒業、立命館大学政策科学研究科博士前期課程修了。毎日新聞社「週刊エコノミスト」記者、衆議院議員政策スタッフ、シンクタンク2005・日本(自民党系)研究員などを経て、従来の霞が関の機能を代替できる政策コンサル産業の成立を目指す株式会社政策工房の主任研究員に就任。主著に『できる総理大臣のつくり方』(春日出版、共編著)『ニッポンの変え方おしえます―はじめての立法レッスン』(春秋社)がある。政策工房Public Policy Review(http://seisaku-koubou.blog.jp)より、著者の許可を得て転載

■関連記事
【黒澤善行の永田町ウォッチ】委員長職権で審議が進む労働者派遣法改正案
【黒澤善行の永田町ウォッチ】地方創生関連2法案、参議院で審議入り
【コラム 山口一臣】解散説急浮上、安倍首相は脱税疑惑に応えるべし

※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。

関連記事