【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】好材料が連動して地合いは様変わり

2014年11月2日 22:02

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

(4日~7日)

■日経平均株価1万8000円も一気に視野

 3連休明け11月4日~7日の株式・為替相場は、日銀のサプライズ追加緩和と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用比率見直し正式発表という好材料が連動した流れを継続しそうだ。4日に米中間選挙、6日にECB(欧州中央銀行)理事会、そして週末7日に米10月雇用統計という重要イベントもあるが、地合いは様変わりの状況であり、世界的に株高の動きを強めている。

 日本の株式市場では、日銀のサプライズ追加緩和で金融・不動産、ドル高・円安の加速で輸出関連、GPIFの運用比率見直しで割安株や高ROE株に対する買いが膨らむだろう。31日のCME日経225先物(円建て)はすでに1万7000円台に乗せた。新規資金が流入して日経平均株価は1万7000円をクリアし、空売りに対する踏み上げが加速すれば1万8000円も一気に視野に入りそうだ。また外国為替市場では日米金利差拡大観測が一段と強まるだろう。ドル・円相場は1ドル=115円も視野に入りそうだ。

 前週(10月27日~31日)は世界的な景気減速に対する警戒感が後退して株式市場には楽観ムードが広がった。29日の米FOMC(連邦公開市場委員会)で予想どおりに量的緩和策第3弾(QE3)の終了を決定し、声明のフォワードガイダンスに「相当期間」という文言が残されて、結果的に米国株、米国債券、外国為替とも波乱なく通過したことや、30日発表の米7~9月期GDP速報値が市場予想を上回ったことも安心感に繋がった。米国株は高値水準に回復し、米10年債利回りはやや上昇し、外国為替市場では米FOMC声明文が前回よりタカ派寄りだったとしてドル買い・円売りの動きを強めた。

 そして31日の日本市場で、午前は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用比率見直しに関する報道を好感し、さらに午後には日銀金融政策決定会合で予想外の追加緩和を決定したことがサプライズとなり、株式市場は急騰し、外国為替市場ではドル高・円安が加速した。

 日経平均株価は取引時間中に前日比875円71銭高の1万6533円まで急騰する場面があり、終値でも前日比755円56銭高の1万6413円76銭となって、いずれも年初来高値を更新した。ドル・円相場は東京時間に1ドル=111円50銭近辺、そして米国時間には07年12月以来となる1ドル=112円40銭台までドル高・円安が加速した。

 日銀のサプライズ追加緩和の内容はマネタリーベース(資金供給量)年間増加ペースを60兆円~70兆円から最大80兆円に拡大する、長期国債の年間買い入れ額を50兆円から80兆円(残高ベース)に拡大する、買い入れる国債の平均残存期間を7年程度から7年~10年程度に延ばす、ETF(上場投資信託)の年間買い入れ額を1兆円から3兆円、REIT(不動産投資信託)の年間買い入れ額を300億円から900億円に拡大する、ETFの買い入れ対象にJPX日経400連動商品も加えるというもので、質・量ともに「黒田バズーカ2」と呼べる内容だった。

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は31日、資産127兆円の運用における資産構成の新しい目安を正式に発表した。厚生労働省が31日午後開催した独立法人評価委員会年金部会でGPIFの運用指針見直し案を了承した。

 年金財政の状況や将来のデフレ脱却を見据え、国内債券の比率(中心値)を60%から35%へ大幅に引き下げる一方で、収益機会を増やすため国内株式を12%から25%へ、海外株式を12%から25%へ、海外債券を11%から15%へそれぞれ引き上げた。さらに柔軟な運用ができるように中心値との乖離幅も拡大して国内債券は上下10%、国内株式は上下9%、海外株式は上下8%、海外債券は上下4%とした。オルタナティブ(代替)投資の総額は資産全体の5%を上限とし、短期資産は資産構成から外した。

 そして「黒田バズーカ2」と「GPIFの運用比率見直し正式発表」は世界株高の動きを誘発した。31日の欧州市場では主要株価指数が軒並み大幅上昇し、米国市場ではダウ工業株30種平均株価とS&P500株価指数が史上最高値を更新した。ダウ工業株30種平均株価は取引時間中に1万7395ドル54セントまで上昇して9月19日の1万7350ドル64セントを突破し、終値でも1万7390ドル52セントとなって9月19日の1万7279ドル74セントを突破した。ナスダック総合株価指数も終値で00年3月以来の高値水準となった。CME日経225先物(円建て)は1万7025円だった。為替は1ドル=112円30銭台、1ユーロ=140円60銭台だった。

 国内企業の9月中間決算発表は31日に前半のピークを通過したが、概ね想定通りの好業績だったことも安心感に繋がる。株式市場ではサプライズ追加緩和を好感して金融・不動産、ドル高・円安加速を好感して輸出関連に買いが膨らむだろう。GPIFの運用比率見直しで低PBRなど割安株や高ROE株に対する物色も強まるだろう。新規資金が流入して日経平均株価は1万7000円をクリアし、空売りに対する踏み上げが加速すれば1万8000円も一気に視野に入りそうだ。

 日経平均株価は1万7000円台に乗せればチャート面で13年5月以降の上値フシを明確に突破することになり、蓄積されたエネルギーが噴出する可能性もあるだろう。当面は主力大型株物色の流れだが、目先的な過熱感を強めた場合に、戻りの鈍い新興市場銘柄へ循環物色が広がるかどうかも注目点だ。

 外国為替市場では、米国のQE3終了と日本のサプライズ追加緩和によって日米の金利差拡大という中期シナリオが鮮明になり、ドル買い・円売りの動きが進行してドル・円相場1ドル=115円も一気に視野に入りそうだ。

 その他の注目スケジュールとしては、3日の中国10月非製造業PMI、中国10月HSBC製造業PMI改訂値、米9月建設支出、米10月ISM製造業景気指数、4日の豪中銀理事会、米9月貿易収支、米9月製造業新規受注、5日の日本9月毎月勤労統計、日本10月マネタリーベース、米10月ADP雇用報告、米10月ISM非製造業景気指数、5日~6日の英中銀金融政策委員会、6日の日本9月景気動向指数、7日の米9月消費者信用残高などがあるだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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