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【小倉正男の経済羅針盤】崩壊しないから怖い中国のバブル
■「構造調整」を避けて崩壊しないからなお始末が悪い
中国経済、とりわけその「不動産バブル」、「バブル崩壊」については世界のあらゆるメディアが指摘している。
経済成長率が7%台に低下し、不動産市況は低迷し、売買件数も減少――。その度に、「ついに」「いよいよ」とウォッチャー専門筋が、「バブル崩壊」に論及してきた。
しかし、銀行倒産、取り付け騒ぎなど「バブル崩壊」現象は拡大をみせないで現在にいたっている。
中国経済の「バブル」は、崩壊するのも怖いが、崩壊しないからなお始末が悪い・・・。
経済は上がったり、下がったりで「変動」を伴う。しかし、中国はその「変動」を認めようとしない。
いまのユーロ圏経済の「バブル崩壊」では、南欧諸国の財政緊縮化、欧州各国銀行の資産売却、人員整理などコスト削減、資本注入と「構造調整」が続行されている。
ところが、中国は「バブル崩壊」をさせないのだから、「構造調整」もない。
「構造調整」は、一時的には経済の減速、デフレの進行を伴い、失業が急増する――。悲鳴が上がる辛気臭い状況になる。だが、「構造調整」を経ないと「バブル」からの完治は果たせない。
中国の「バブル崩壊」がなく「構造調整」がないのは、およそ恐ろしい現象ということなる。
■銀行は規制されており国有企業に限定して低利融資
中国が抱えるあらゆる問題の根源は、ほとんど「社会主義市場経済」に帰結するのではないか。
政治では共産党独裁を行っている。共産党高級幹部が権力と富を握り、その子弟たちが富の分配を享受する。経済は資本主義が採用され、富をむさぼることは肯定される。
シャドーバンキング、すなわち「影の銀行」なども、その奇態な政治経済体制から廻りまわって生み出されたものにほかならない。
中国の銀行は、「傾斜生産方式」というか、「社会主義」というか、国有企業に限定して融資を行っている。中国の銀行金利は規制されており、預金が3%、貸出は6%――。つまりは、融資も金利も自由化されていない。 国有企業は、共産党高級幹部の子弟達「太子党」の巣窟といわれている。中国の銀行は、規制されており、国有企業を優遇して融資するしかない。
■市場の実勢のニーズがシャドーバンキングを必要とした
ところが、「太子党」や新興成金を含め、お金持ちはもっと高い預金金利を求める。利回り10%超の「理財商品」といった投資信託商品が出回るようになる――。シャドーバンキングとしても、融資には資金集めが必要だから「理財商品」をつくったわけである。
お金持ちが不動産投資を行うにも銀行は貸出をしてくれない。銀行としては貸出金利が6%程度ではリスクが高すぎるから融資できないという面もある。
国有企業以外の地方政府、企業も不動産・建設などへの資金需要はきわめて旺盛だ。銀行の低金利融資は、これらのセクターも受けられない――。15%内外の高い貸出金利でもかまわないから融資してくれ、という需要が発生する。
市場の実勢、市場経済はおカネを求めている。「社会主義市場経済」の規制があるから、「影の銀行」=シャドーバンキングが必要になる。シャドーバンキングは、そうした市場ニーズの実勢から生み出されてきた。
中国経済は、「社会主義市場経済」と「市場経済」に分裂している。
「市場経済」は、闇市、あるいは自由市場のようなもので、よかれ悪しかれ実勢を反映している。「社会主義市場経済」の規制が、シャドーバンキングを急激に膨張させた。
規制すればするほど「市場経済」が膨らむ――。中国は、胎内に膨張した「市場経済」によって、経済のみならず、共産党独裁といった政治体制まで巨大な「変動」に直面する事態をいずれ迎えるのではないか。
(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数) (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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