NYの視点:戦争プット

2014年10月31日 07:02

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記事提供元:フィスコ


*07:05JST NYの視点:戦争プット

米商務省が発表した7-9月期国内総生産(GDP)速報値は前期比年率3.5%増と市場予想の3.0%増を上回り、4-6月期4.6%増に続き3%以上の成長を記録した。2四半期を通じた成長率は2003年下半期以降で最高。政府支出の拡大や貿易赤字の縮小が寄与した。政府支出の拡大幅は金融危機や景気後退(リセッション)への対処で大規模な刺激策を講じた2009年4−6月期以降で最大となった。テロ組織ISISなどに対する戦いのために国防費が増加。国防費は前期から300億ドル増加しており、増加幅は2008年以来で最大となる。

一方で、米国経済の3分の2を占める肝心の個人消費は前期比1.8%増と、市場予想の1.9%増を下回り、4-6月期の2.5%増から伸びが鈍化。また、GDP価格指数も前期比+1.3%と、市場予想の+1.4%を下回り、4-6月期+2.1%から低下した。表面的な成長ペースは予想を下回ったものの、消費の伸びや価格指数の伸びが予想を下振れたことに、市場関係者は失望感を隠せない。政府の支出を除いた民間の成長は2.4%にとどまる。これは、上半期の成長ペースにほぼ並ぶ。成長ペースはFOMCメンバーや多くの民間エコノミスト予想を下回る。

7−9月期GDPの修正が限定的であること、10−12月期経済で平均的な成長見通し3%を鑑みると、2014年の米国国内総生産(GDP)は2.3%増になる公算。2013年の2.2%、2012年の2.3%に続く。GMP証券のエコノミストは景気が底を打ち、2015年には3.2%成長に改善を予想している。一方で、JPモルガン銀行のエコノミストは米10−12月期の国内総生産(GDP)成長見通しを2.5%へ引き下げた。従来は3%だった。

戦争による国防費を中心とする政府支出の増加がGDPを押し上げたことを連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーが承認し、10月会合では市場の思惑以上にタカ派に傾斜したことを問題視する市場関係者もいる。米国経済の回復が容易でないことが示された。米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げを見込んだドルの上昇ペースも緩やかなものに限られると見る。《KO》

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