富士フイルムの「アビガン錠」に世界的な注目

2014年10月21日 15:09

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記事提供元:フィスコ


*15:09JST 富士フイルムの「アビガン錠」に世界的な注目
富士フイルムホールディングス<4901>は20日、エボラ出血熱患者への投与拡大に備え、「アビガン錠200mg(一般名:ファビピラビル)」を11月中旬から追加生産すると発表した。
同薬は同社グループの富山化学工業が開発し今までの薬とは効き方の違う「抗インフルエンザウイルス薬」として薬事承認を受けているが、マウス実験においてエボラウイルスに対して抗ウイルス効果を有するとの結果が公表され、これまでに西アフリカから欧州に緊急搬送されたエボラ出血熱患者複数人に対し緊急対応として投与されている。
11月中旬から、ギニアでフランス政府とギニア政府がエボラ出血熱に対する「アビガン錠」の臨床試験を始める予定で、この臨床試験で同薬の効果や安全性が認められた場合には、より大規模な臨床使用のための薬剤の提供要請が見込まれる。また、感染規模が拡大した場合において十分な量を継続的に供給できるようにするため追加生産を開始する。
同社は、現時点で2万人分の錠剤を有し、原薬としてさらに30万人分程度の在庫を保有しているという。
エボラ出血熱は、西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国を中心に猛威を振るっており、これまでに4500人以上が死亡している。
3カ国での感染拡大はいまだ止まらず、世界保健機関(WHO)が先週、1週間での新規感染者数が12月までに1万人に達する恐れがあると警告した。
一方、WHOは20日、西アフリカのナイジェリアではエボラ出血熱の感染が終息したと宣言した。同国では19人の感染が確認され、うち7人が死亡したが、9月上旬の感染者発覚を最後に最長潜伏期間の2倍に当たる42日を過ぎても新規感染者が出なかったため、封じ込めに成功したと判断した。終息宣言は17日に出されたセネガルに次いで2国目で、二次感染が確認された国では初めて。アフリカで最大の人口を持つナイジェリアでの封じ込め成功は重要な意味を持つと思われる。
また、スペインの患者は回復しつつあり、米国のダラスでも患者と接触があったとみられていたうちの43人が感染リスクなしと判断された。
これからインフルエンザも本格的に流行する季節となる。各国で協力して感染拡大を防ぐことに全力を尽くさなければならないだろう。緊急対応の投与で良い結果が出るのは喜ばしいことだが、「アビガン錠」は日本でも妊婦が服用すると胎児に副作用が出る可能性が高いことなどから、従来の薬が効かない新型インフルエンザが大流行した時に限って使用を認められている。これからの臨床試験で「アビガン錠」の効果や安全性が早期に認められることに期待したい。《YU》

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