【コラム 梁瀬洋】地熱発電推進で温泉が「枯渇」する?

2014年10月15日 10:31

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【10月15日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

■地熱はエコで安全か


 日本の各地には有名無名様々な温泉がある。休暇に仕事の疲れを癒すために訪れるという人も多いのではないだろうか。私の周りにも温泉好きが特に女性に多いようだ。

 日本人に癒しと一寸した非日常を与えてくれる温泉だが、ある問題に晒されている。

 東日本大震災に伴う福島第一原発の大事故で全国の原発が停止する事態となり、電力各社は化石燃料による発電を増やして不足分を補っている。しかし、燃料輸入コストが嵩み経営を圧迫している。その解消策の一つとして地熱発電が注目されている。

 地熱発電は火山地下マグマ近傍の地熱貯留層と呼ばれるところから蒸気を取りだし発電に利用する。燃料は100%自然由来で燃料代もかからない。化石燃料を燃焼して出る二酸化炭素や核反応から出る放射性物質のような副産物もない。

 エコで安全な発電というわけだ。

■地熱発電所近くで泉質変化


 火山数が、世界第三位の日本ならではの良い事ばかりに見える地熱発電だが、しかし秋田や大分の地熱発電所では発電所近くの温泉の泉質変化や源泉枯渇が起きていると言われる。草津温泉や下呂温泉付近での開発に対して、秋田や大分の実情を知った地元旅館業者から猛反発を受け計画が中止になった経緯がある。

 地熱発電に関し温泉保護の観点から住民との協議のスキームがないという批判を受け、環境省は今年の3月に「温泉資源の保護に関するガイドライン」をまとめている。住民との協議はその第四に記されることになった。地熱発電に関し政府としてようやく必要な過程として取り入れた形だ。

 ガイドライン作成に当たっての環境省の意見公募でも、「地熱発電は再生可能エネルギーとは言えない」など手厳しくも興味深い意見がいくつも出されていたと聞く。

 話は変わるが、東日本大震災の大津波の後、東北地方沿岸に巨大防潮堤の計画があることは知られている。

■東北地方沿岸に巨大防波堤の計画


 総額1兆円とも言われる高さ10mを越す巨大防潮堤について、専門家からは費用対効果に疑問が出され、住民側は不要と決議するなど、計画に疑問が呈されている。確かに、岩手宮古市自慢だった大防潮堤が無惨に破壊されていたり、環境省が景勝地に選定した宮城気仙沼の砂浜に国土交通省が巨大防潮堤を作ろうとしているのを見ると、こんな計画で本当にいいのだろうかと疑問に感じざるを得ない。

 余談ながら、推進する政府・安倍首相の妻・昭恵夫人は反対運動に参加している。

 防潮堤に関しては、今年の6月に海岸法が改正され、堤の設計段階で住民と協議する過程が盛り込まれることになったが、それ以前の計画については変更されることはないという。よく見ると、地熱発電と同じ構図だ。

 本当に必要なサービスを阻害するような縦割りを解消し、行政側の思いだけでなく住民と対話していく。大津波がきっかけとなって、そうした行政の体制が今後求められる流れとなっているように見える。

 季節は、既に秋模様だ。温泉に浸かりながらこのようなことについて考えてみるのも一興ではないか。【了】

 やなせ・よう/東京都在住、1965年生まれ、大手精密製造メーカーに勤めながら、ネット投稿を通じて社会や人生の諸問題について考え続ける自称市井思想家。

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