産総研、上下逆さの顔は見分けにくくなるメカニズムを解明

2014年10月11日 21:16

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正立の顔では顔情報と個体情報の両方を、倒立の顔では顔情報だけを処理する(産総研の発表資料より)

正立の顔では顔情報と個体情報の両方を、倒立の顔では顔情報だけを処理する(産総研の発表資料より)[写真拡大]

  • 顔画像提示後に側頭葉単一神経細胞が処理する情報量の時間経過を示す図(産総研の発表資料より)

 産業技術総合研究所の菅生康子主任研究員・松本有央主任研究員らによる研究グループは、顔を逆さに見せると側頭葉の神経細胞は顔であることを認識するが、個体や表情に関する情報量が減少することを明らかにした。

 顔を逆さにすると見分けにくくなることはよく知られており、例えば上下逆さの顔は目や口に画像操作を加えても気付きにくい現象はサッチャー錯視と呼ばれている。しかし、この時に脳がどのように働いているかという詳細は明らかになっていなかった。

 今回の研究では、ヒト・サルの顔画像や単純図形を使い、正立または逆さの状態で提示した時の側頭葉視覚連合野内の神経細胞の活動を記録した。その結果、脳内ではまずヒトかサルか画像かの判別をしその後に個体や表情を処理していること、そして顔を逆さに提示すると個体や表情の情報処理量が減少することが分かった。

 今後は、さらに研究を進めることで生体の顔認識メカニズムの理解が深まり、顔認識システムの開発に貢献することや、顔の認識ができない(相貌失認)疾患や認知症などで個体・表情認知の機能が低下する病態のメカニズム解明にも寄与することが期待されている。

 なお、この内容は「Journal of Neuroscience」に掲載された。

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