政治家に訊く:羽生田俊自民党参議院議員「民間議員は大臣同様の資産公開を!」

2014年10月9日 11:23

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【10月9日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

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第187回臨時国会が召集。衆参両院の本会議で、安倍晋三首相の所信表明演説が表明された。首相は「大胆な規制緩和なくして成長戦略は実現しない」と、医療などの分野で「岩盤規制」を緩和し、新しい産業や雇用を生み出すことに取り組むと断言した。政権の目指す方向と現在の医療システムは相容れるのか。SFNは、4回にわたり前日本医師会副会長の羽生田俊自民党参議院議員に話を聞いた。
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■患者のための医療はどこに


 横田 政府が国家戦略特区で展開する規制緩和策の第2弾を月内に開く特区諮問会議(議長・安倍晋三首相)で、議論のテーブルに乗せるようです。特区内では、医師資格のない企業経営者なども医療法人の理事長に就きやすくすることで、病院に経営の視点を入れ、サービスの向上や財務の健全化を促すとか。

羽生田 私は、国家戦略特区の問題に対しては、TPP以上に、世界に誇れる日本の公的医療保険制度を崩壊させかねない、経済だけが先行し、医療の本質を全く見ていないと強く警鐘を鳴らしております。

特に、医療において営利企業(株式会社)が参入してくることは、株式配当が顕著なように株主の為の企業であり、患者の為の医療でなくなる可能性を秘めたものです。

「誰もが、いつでもどこでも安心して医療を受けられる制度」いわば公的医療保険制度を崩壊するものとして、到底見逃すことができない、徹底して阻止するものであります。

昨年の「日本経済再生本部及び内閣部会合同会議」でも発言させていただきましたが、今までの規制は国民を守るためにかけた規制であったことを踏まえ、なぜ規制が必要だったのかということを今一度考え直していただきたいと思う。規制をはずす議論が優先されるのは本末転倒です。

諮問会議の民間議員には、IT企業の経営者もいます。私が最も奇妙に感じるのは、選挙で選ばれた議員よりも、諮問会議の民間議員の方が権限を持っていることです。相当の資産を持っている人間が、年収100万や200万で生活している国民のことをどれだけ考えているのかと疑問を感じることも少なくありません。

諮問会議をはじめとする民間議員の方々の中には制度改正によって自分の会社が有利となる利益相反の方がいらっしゃるのが、大変危惧する所です。

何の為に制度を変えたいのか、国民の為でなく、もしかして「会社の利益の為に制度改正が必要なのではないか」と思えるような発言が多くに見受けられます。

■ネットで氾濫する危険ドラッグやニセ薬


 横田 大衆薬や市販薬と呼ばれる一般医薬品の販売ルールなどを定めた改正薬事法が今年6月に施行されました。ロキソニンやガスター10などに代表される第1薬医薬品に分類される薬と第2類医薬品のネット販売が正式に解禁され、一般医薬品の99%はインターネットで購入できるようになりましたね。

羽生田 しかし、アレジオン10など「医療用医薬品」から一般用医薬品に転用された医薬品は原則3年間対面販売が必要となりネットでの販売を行うことは出来ません。第一類医薬品は、副作用リスクが高いとされているもので、販売の際は、薬剤師が医薬品に関する情報提供をすることが義務づけられています。

ネット販売でも、使用者の確認や個別の情報提供、提供した情報を確認したことが必要になっています。薬には副作用がありますので、国民の生命と健康を少しでも守りたいとの思いからです。

今、世界医師会(本部・フランス)でも大変な問題になっているのが、インターネットによる薬販売です。危険ドラッグも販売されています。また、「ニセ薬」の問題もあります。日本の近隣にある大国では、ネットで売られているおよそ4割がニセ薬と言われています。

こうした国では、

「ネットで薬を買って飲んだけれど効かなかった」

という報告を受けたら、「良かった」と思わなければなりません。悪い方向に「効く」可能性が高いからです。

ところが、そのIT経営者は、

「配信(ネット販売)はあくまで道具だから、販売されている薬の内容には、うちの会社は責任持ちません」

そう明言したのです。

また、諮問会議の議論の中に「選択療養」ということがありました。

「患者と医師が納得すれば何をしてもいいじゃないか」

と、言い放った民間議員がいました。

これは、医療界を初め、患者団体からも強い反対があり、結果的に、現在は「患者申し出療養」となり、「安全性・有効性」の確認と「保険収載を目指す」という事項を盛り込み了承されました。

また、その他の議論では、風邪薬についての意見も出ています。現在、医療保険財政が逼迫しているのは周知の事実です。

民間議員の方々は、

「風邪ぐらいの軽医療だったら保険で診る必要はないから、薬局の風邪薬(一般用医薬品)で十分であり、保険で診る必要はない。いわゆる保険の給付範囲を狭めろ」

という考えのようです。

経営者としては有能なのかもしれませんが、こういう志向の方が病院経営に入ってきたら、間違いなく、アメリカ的な格差医療が生じる。そもそも、インターネットで薬を売ることが経済効果に繋がるとは思えません。薬はサプリメントではないのだから、そもそも、飲まない方が良いに決まっています。

■民間議員にも資産公開を


 横田 確かその民間議員の方は、医師の処方箋で出す薬が販売できないことが決まった時、「議員を辞める」と仰っていた記憶があります。

羽生田 実は、その話が出た時、別の会議中でしたが全員拍手喝采で応じました。インターネットにどんなメリットがあるのか等、ヒアリングする分にはいい。しかし、選挙を経て国会へ来ている議員より権限があるというのは、前述したようにどうにも納得できません。

もしそれだけの権限を持つのなら、「大臣と同じように資産公開をすべき」ではないでしょうか。大臣になると、妻の資産まで公開されるわけです。

 私の主張していることはかたくなだと思われる方もいるかもしれませんが、公的医療保険制度を堅持する為であり、私の掲げる「すべての人に優しい医療」というのは、「誰でも何処でも安心して医療を受けられる」ことを実現するため、そして世界に誇れる日本の国民皆保険を守る為に心を鬼にして、発言しています。

次回は、新薬の研究についてもお話させていただければと思います。【了】

〈羽生田秘書ココロの一句〉岩盤にドリルで穴をと政府曰く 骨太の骨を斧で砕くと羽生田曰く

 羽生田俊/はにゅうだ・たかし
1948年、群馬県前橋市生まれ。東京医科大学医学部卒業後、群馬大学医学部附属病院眼科学教室入局。医学博士。78年、羽生田眼科医院院長に就任。群馬県医師会理事、日本医師会常任理事、日本医師会副会長などを経て、2013年、参議院議員選挙全国比例区において初当選。現在、参議院厚生労働委員会理事に所属。趣味は音楽(ハワイアン、マンドリン)、自動車(ラリー競技)など多彩。好きな言葉は「全力投球」。共著に「心の病:治療と呼ぼうの現在」がある。HPにすべての人にやさしい医療を(https://www.hanyuda-t.jp)がある。

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