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下げた株ほど良く戻る「リターン・リバーサル」の投資セオリー銘柄に敢えて再生可能エネ関連株をターゲット=浅妻昭治
<マーケットセンサー>
何とも皮肉なものだ。安倍晋三首相が、「地方創生国会」と意気込んだ臨時国会が召集された途端に株価暴落である。もともとこの10月相場は、日米両市場とも日本では、10月から11月に福島県知事選挙、沖縄県知事選挙、米国では11月の中間選挙を控え、「選挙に株安なし」と「政治相場」色を強める展開が待望されていた。ところが、両市場とも暴落、前週末3日は米国ニューヨークダウが急反騰したものの、なお欧州経済の先行き懸念や地政学的リスクは尾を引いて、なかなか投票マインドを落ち着かせてくれず、政権与党に追い風とはなってくれていない。
安倍内閣の「地方創生国会」にしても、これを投資家マインドからみると、折角、為替相場が、1ドル=110円台と約6年2カ月ぶりの円安となったものの、「円安=株高」の方程式が通用しなくなった。円安は、企業業績を押し上げるプラスの影響はあるものの、物価や原材料価格を上昇させて個人消費や中小企業、地方経済に打撃を与えるマイナスの影響が大きく、「地方創生」どころか「地方壊滅」につながりかねないと懸念され始めている。
こうなると、安倍首相が臨時国会終了後に政治決断される来年10月からの10%への消費税再増税にも赤信号が点滅しかねない。安倍政権としては、なりふり構わないテコ入れが不可欠になるはずだ。手っ取り早いのは、株高による投票マインドの一新である。2012年11月からの「アベノミクス相場」の発進も、株高が起爆剤になっている。「官製相場」、「御用金相場」の再来期待が高まるはずで、黒田日銀の追加金融緩和策が、円安要因にもなるだけに、経済対策のほか、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用改革前倒しなどに株式市場対策に望みをつなぐことになる。
幸いなことに、前週末3日の米国市場は、ニューヨークダウが、市場予想を上回った9月の雇用統計の発表を好感して、208ドル高と今年3月以来7カ月ぶりの値上がり幅の大きさで急反発、心理的なフシ目の1万7000ドル台を3日ぶりに回復した。これをチャンスに東京市場も、一気のリカバリー相場に望みを託したくなるところである。
週明けからリカバリー相場が展開されるとして、どのセクター、銘柄にターゲットを絞り込んだらより好パフォーマンスが期待できるか?目先の投資セオリーは、下げた株ほど良く戻るとする「リターン・リバーサル」である。一番手は、暴落相場で率先して売り物を浴びせられた電機、自動車などの輸出主力株となるが、ここでは、敢えて再生可能エネルギー関連株にアプローチしてみたい。
再生可能エネルギー関連株は、今回の暴落相場に先立って株価が急落した。悪役銘柄のサニックス <4651> は、9月26日にストップ安と売られて年初来安値追いとなり、5月につけた年初来高値1637円からは6割超の値下がり率となった。この株価急落の足を引っ張ったのは、九州電力 <9508> が、9月24日に再生可能エネルギー発電設備に対する接続申込みへの回答を保留すると発表したことにあった。太陽光発電設備により発電された電力は、2013年7月にスタートした固定価格買取制度により電力各社により買い取られ、運転停止中の原子力発電所の代替エネルギー、地球温暖化対策エネルギーとして大きな役割を担ってきた。
ところが九州電力は、九州地方の太陽光発電の発電中の設備量が、全国の約4分の1を占めるなど急速に普及拡大して、接続契約申込みが、今年3月には昨年1年分に相当する7万件もが集中、受給バランスが崩れ、大規模停電の発生など電力の安定供給にも支障をきたすとして接続申込みへの回答をしばらく留保するとした。この九州電力に続き、9月30日には東北電力 <9506> 、四国電力 <9507> 、北海道電力 <9509> も、揃って同様の回答保留を発表した。
サニックスは、すでに今年8月5日に今3月期第2四半期(2Q)累計業績の下方修正を発表、2Q累計純利益が、電力会社の接続検討の長期化で産業用太陽光発電シシテムの施工件数が見込みを下回るとして期初の大幅増益予想から赤字転落予想と落ち込んだことからストップ安を交えて852円安値まで急落、いったん1000円台まで回復したものの、九州電力の回答留保が追い討ち材料となって年初来安値まで再急落した。
この九州電力の回答留保問題については、早速、反原発の識者からブーイングが聞こえてきた。九州電力の川内原発再稼働を前にした再生可能エネルギー潰し、固定価格買取制度の設計ミスなどと騒ぎ立て、これに戦後最悪となった御嶽山の噴火災害も加わって、臨時国会での政争イッシューとして取り上げられる可能性もないとはいえない。固定価格買取制度は、東京電力 <9501> の福島第1原子力発電所事故を受けて鳴り物入りでスタートし、その優遇買取価格から認可を受けての施工せず差益を稼ごうなどと目論む不届き者も現れる「固定価格買取バブル」の様相も帯び、買取価格も引き下げられた。
所管大臣は、日本初の女性宰相誕生との呼び声の高い小渕優子経済産業大臣である。川内原発の再稼働問題を含めて、この回答留保・固定価格買取制度案件の手腕がより注目されることになり、再生可能エネルギー関連株にとっては、「リターン・リバーサル」期待とともに、「政治銘柄」化思惑も高まるはずである。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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