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【小倉正男の経済羅針盤】消費税再増税、判断誤れば国が傾く
■増税ばかりでは元も子も失う
アメリカでは、税制改正(タックスリフォーム)というと「減税」を意味すると言われる。人々は、税制改正とは「減税」してくれるのか、というイメージで受け止めている。
日本では、税制改正とは「増税」をやわらげて抽象化して伝える言葉になっている。
世界では、相続税などは取りません、という地域や国が増加している。お金持ちを納税者として取り込みたいから、相続税はゼロにしているのである。
その地域や国としては、相続税ゼロだから是非住んでくれ――、というわけだ。相続税は取らないが、お金持ちが移住すれば消費税や所得税は落ちる。
地域、あるいは国が「減税」を武器に住民の呼び込み競争をしている。地域、国が、税制に知恵を絞り、生き残りを掛けている――。
日本では、東京都など首都圏の庶民からも広く薄く相続税を取るというのだから、競争も生き残りも何もない。
だが、税金を取ることばかりに知恵を傾ければ、元も子も失うことにならないか。
■判断を誤れば、「失われた次代」の暗黒に再び陥落
年内に判断・決定する8%から10%への消費税再増税だが、首相、官房長官はやや慎重姿勢と言われている。
確かに、「消費税の崖」をエイヤで飛び越えるには、不確実性というかリスクが大き過ぎる。足元がすくむというか、震えるような問題である。
消費税再増税の積極派は、実施しないと国債が暴落して金利が上がり、円高になって株価が下がるとしている。しかし、日銀が「異次元金融緩和」ということで国債を大量に買い支えている現状を見ていれば、果たしてそうかなと・・・。
「国際公約」だからという説もある。しかし、消費税再増税で景気が大きく失速したり、スタグフレーションに陥ったりすれば、日本再生どころか、日本再失速になりかねない。
首相、官房長官がやや二の足を踏むのは当然であり、そう簡単に判断するべきではない。ここで判断を誤れば、またまた「失われた時代」に逆戻りし、その喪失感は計り知れない。
■2%の消費税増税でも国が傾くことがある
元も子もないとは、元は「経済」であり、子は「税」にほかならない。
経済がよければ、増税なしでも、税収は増える。逆に増税しても、経済が悪化すれば、税収は減る。
1997年の橋本龍太郎内閣が典型例――、橋本内閣は消費税を3%から5%に上げた。たかだか2%の消費税増税で金融恐慌の引きガネを引いた。それは誰でも知っていることだ。
「税」という漢字は、太古の農業経済時代、人々が「稲」で地域の権力者に年貢・地租を上納したことから派生して創られたとされている。 「稲」を実らせることが先決――。「稲」が実らなければ、「税」はない。
増税には大義も必要だ。公務員や議員への歳出が増税で増加しているのでは大義がない。大義を持てないとすれば、増税を行う政権への失望も半端ないことになる。
「国債・株価暴落説」「国際公約説」などに惑わされる必要はない。ここは経済のみを曇りなく見据えて、慎重な上に慎重な姿勢で、適正な判断をしてもらいたい。 たかだか2%の消費税再増税というべきではない。2%の消費税増税で国が傾くことがあるからだ。
(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』(PHP研究所刊)など著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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