『いまどき真っ当』な投資家道(3)「カリスマファンドマネージャー、今後10年の日本経済の指針を示す」

2014年9月22日 10:20

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【9月22日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

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藤野英人/ふじの・ひでと
ひふみ投信ファンドマネージャー。レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者(CIO)。野村投資顧問(現:野村アセットマネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなどを経て2003年レオス・キャピタルワークス創業に参加。?特に中小型株および成長株の運用経験が長く、23年で延べ5300社、 5700人以上の社長に取材し、ファンドマネージャーとして豊富な経験を持つ。東証アカデミーフェロー。明治大学ベンチャーファイナンス論講師(12年間)公益社団法人スクールエイドジャパン理事。著書に『5700人の社長と会ったカリスマファンドマネジャーが明かす 儲かる会社、つぶれる会社の法則』(ダイヤモンド社)などがある。
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カリスマ的な実績を持つファンドマネージャーとして著名な藤野氏は、コモンズ投信の渋沢健氏、セゾン投信の中野晴啓氏らと共に長期投資を応援する「草食投資隊」を結成し、東証と連携して全国キャラバンなどを展開中だ。投資家教育に力を注ぐ、「『いまどき真っ当』な株式投資」の伝道師のような存在でもある。
第2回(http://www.sakurafinancialnews.com/news/9999/20140906_1)では、個人投資家が実践に役立つ方法から一歩踏み込み、資本市場改革、指数改革について語って貰った。旅立ち前の第3回では、日本株の将来や「旅人」である高山自身がひふみ投信について感じたことなども議論した(旅人・SFN特派記者・高山泰三)

■今後10年で、日本株は劇的に差がつく

高山 実は私は、「子どもの名義」でひふみ投信を毎月積み立てています。積立額は少ないのですが、娘が大人になった時に、経済的な心配がなく好きな道に進めるような額のお金になればと期待しています。藤野さんは日本株の将来については、どのようにお考えでしょうか。

藤野 そう聞くと、ご期待に添えるように頑張らなくてはと身が引き締まる思いです。

日本株全体については、先行きは明るいでしょうが、インデックスは横ばいではないでしょうか。ただし、この先10年で、中身の入れ替えが劇的に起きると思います。アクティブ投信の中でもが勝つ方と負ける方とで圧倒的な差がつくでしょう。

例えば、大企業のサラリーマン経営者というエスタブリッシュメント系はシュリンクして、独立自尊のオーナー経営者による新しい企業がより成長するという結果になるだろうということです。極端に言えば、前回指摘した大企業が抱え込んでいる現金(=内部留保)が成長する企業の餌になるという構造です。

アメリカでは、オーナー企業ではなくとも、株主と経営者の利益が一致していて、その方が社会的に望ましいという合意があります。日本はまだそうなってはいないので、ショートスパンでは、大企業のサラリーマン経営者がいなくなることはない。しかし、彼らが今のように現状維持を優先する経営をしていれば、立ち行かなくなりシュリンクしていくでしょう。または、強いリーダーの率いる会社に飲み込まれる可能性も出てくる。

一方、強いリーダーシップをもつ経営者の会社に投資すれば、10年で2倍か3倍になる。私はそういう企業にベットしたいと思っていますし、結果として、日本社会の改革や改善に繋がると信じています。

大企業につては、社長の任期を一期4年とか二期8年といった長いスパンにするといった構造改革をやらざるを得なってくるのではないかと考えています。

■2000万年にひとりの大天才?!

 高山 子どもの積み立てをしているから言うわけではありませんが、ひふみ投信は、面倒見の良いファンドだと感じます。全国を回って投資家教育をやり、株式市場のレビューや今後の投資戦略について説明する「ひふみアカデミー」という動画を流し、企業の工場見学まで主催している。

大手証券会社で大きく売れば楽で簡単なはずです。なぜ、これほど手間のかかる活動を続けているのでしょうか。その行動を支える原動力はどこからくるのでしょう。

藤野 そうですね。まず、ひふみ投信が、投資信託業界全体の中でどのようなポジジョンにあるのかというお話からしたいと思います。当社は、R&I(格付け投資情報センター)ファンド大賞で2年前には1位、昨年は2位、今年はまた1位に返り咲きました。ライバルは500社以上あります。野村さんや大和さん、日興証券さんなど大手も全て含めた数です。約500社ある中で、1位→2位→1位をとる確率を計算したところ、2000万分の1という数字が出ました。例えが適当かわかりませんが、2000万年前は、猿と猿人が別れた辺りの時代です。ひふみ投信の「成績」は、普通に考えると有り得ない。

なぜ、あり得ない事態が起きたのか。2つの可能性があります。

ひとつは、私が2000万年に1人の大天才だということ(笑)。ふたつめは「何か仕組みに問題があったのではないか」という可能性の部分です。個人的には、1番目だと思いたいのですが・・・(笑)。実際問題、今までの仕組みがおかしかったのだと思います。

昨年1位に輝いたのは鎌倉投信という会社です。鎌倉投信は、今年は2位でした。つまり、鎌倉投信と弊社で、ここ数年はトップ争いをしている。いずれも世間的な知名度はあまりないと思います。その上、国際投資系では草食投資隊の仲間であるセゾン投信が1位を取っています。

実はこれらの投資信託に共通することがあります。それは、「銀行や証券会社を通さない直販」というやり方で販売していることです。

■直販投信で、投資家教育を!

高山 直販の効果は相当に高いのでしょうか。

藤野 今、設定されている投資信託は全部で5500本あります。そのうち4900本は、銀行や証券会社を通じて販売されています。

銀行や証券会社で販売されている投資信託は、最初の半年間で大きく売り、後はだらだらと資金流出が続くという特徴があります。これが何を意味するか。ほとんどのファンドは、時間とともに劣化する傾向が高いということなのです。一方直販は、毎月コンスタントに資金流入があります。

この差が極めて大きい。つまり、私たちが結果を出すこと=投資家教育に繋がっているのです。

確かに直販にかかる手間はひとことでは言い表せないほど大変です。しかし、優位性もまた明らかなので、がんばって続けていきたいのです。それに、大手の運用会社は系列の販売会社も一緒になっていますから、直販には踏み込めない点も、実は我々には有利なのです。米国ではバンガード、フィデリティ、キャピタルといった規模の大きい独立系の運用会社がありますが、日本にはまだありません。

結果として、弊社やセゾンのような会社が拡大して、日本にも直販投信の文化が根付けばと思っています。

直販系投信の優位性は、その仕組みを理解して継続して投資してくれるお客様がいて、成り立ちます。私たちにとっては、安定的に結果を出し続けていくことが全てです。そうして初めて、信頼を得ることができる。もちろん短期的には他のファンドに負けることがあるかも知れないけれども、2014年も引き続き1位を狙っていきます。【了】

[旅人・高山の一筆御礼]

当日は予定時間を大幅にオーバーしてインタビューに応じて頂き、ありがとうございました。
柔らかい語り口、ほのぼのとした風貌。しかし、ふとした瞬間に見せる鋭い眼光。物事の本質を極めて簡単な言葉で説明する能力。私もインタビュアーという立場を忘れて、すっかり藤野さんワールドに魅了されてしまいました。
5,700人以上の経営者と実際に会って話をしてきたということですが、恐らく相当な数の経営者が私と同様に藤野さんのファンになったのではないでしょうか。だからこそ、数多くの名経営者が本音を語り、経営者と投資家といった関係以上の良好な関係を構築しているのだろうと感じました。これは、まさに「『いまどき真っ当』な投資家道」のお手本です。藤野さんの教訓をいかして、今後も、研鑽をつんでゆこうと思います。

たかやま・たいぞう/旅人・SFN特派記者 1976年、東京生まれ。米国ワシントン州公認会計士・文京区議会議員(民主党所属)。立教大学法学部卒、早稲田大学大学大学院修了。大学卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)にて中小企業向け融資業務を担当。個人投資家として数社に対する株主提案の共同提案者となり、増配や社外取締役の選任を促す等の成果を得る。区議会議員としては監査委員等を歴任。

ひふみ投信とは:「できるだけ安いコストで幅広いお客様の資産形成を長期にわたって応援したい」という思いをこめて2008年10月にスタート。「守りながら増やす」をコンセプトに成長する日本株に投資し、高い成績をおさめ続け、株式会社格付投資情報センター(R&I)が選定する「R&I ファンド大賞」を投資信託/国内株式部門で3年連続受賞している。

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