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【コラム 山口利昭】闘うコンプライアンス!-ネスレ日本の対消費者広報戦略
【9月16日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
9月15日の日経朝刊「法務インサイド」では、景表法に課徴金制度が導入される見込みとなり、勉強会の開催など企業が商品表示の適正化について戦々恐々となっている姿が報じられていました。「不当表示になるのが怖いので、無難なイメージ広告ばかりになるかもしれない」といった声もあるようで、今後の景表法改正が、商品やサービスの表示に萎縮効果を与えかねないとのこと。
ところで、先週の朝日新聞(朝刊)に掲載されたネスレ日本さんの全面広告が目を惹きました。「オテル・ドゥ・ミクニ」のオーナーシェフ三國清三氏を起用したもので、いま物議を醸している「レギュラーソリュブルコーヒー」の紹介記事です。ご承知の方もいらっしゃると思いますが、ネスレ日本さんが所属する全日本コーヒー公正取引協議会において、この「レギュラーソリュブルコーヒー」という(広告表現としての)名称使用の可否が審議されていましたが、結局、公正競争規約上では認められませんでした。そこでネスレ日本さんは、同協議会を脱退し、公正競争規約の庇護から離れ、今後はJAS法に基づく表示の適正確保に向けた対応をとられるそうです(ネスレ日本さんのリリースはこちら(http://www.nestle.co.jp/media/pressreleases/allpressreleases/20140723)です)
レギュラーコーヒーではなく、インスタントコーヒーではないのか?「レギュラーソリュブル」って優良誤認ではないのか?・・・・・といった批判も当然出てくると思います。景表法上で禁止されている「優良誤認」かどうかは、一般の消費者の視点から判断されるのですから、今朝の日経新聞で指摘されているとおり、法令遵守を念頭に置くとなると、どうしても判断が萎縮してしまうと思います。だからこそ公正競争規約という「ソフトロー」の存在は、コンプライアンスリスクを低減させるという意味では、企業にとってはありがたいですし、今後景表法に課徴金制度が導入されるとなると、各業界において公正競争規約の活用がますます検討されることになると予想します。
しかし、人と違うことをやることもビジネスの戦略であり、優良誤認のリスクがあるのであれば、逆に一般消費者に誤認のおそれがないように「打って出る」こともコンプライアンスのひとつの手法だと考えます。「ネスカフェ アンバサダーによるオフィス市場の開拓」が日本マーケティング大賞を受賞する好機を捉えて、全面広告によってインスタントコーヒーとレギュラーソリュブルコーヒーとの違いを明確に打ち出し、「第三のジャンル」であることを消費者に認識してもらう、というネスレ日本の姿勢も、まさに「闘うコンプライアンス」のひとつだと思います。お上の言うことを思考停止で従うのではなく、むしろ行政当局の規制の趣旨を理解して、自分の頭で考えながら消費者教育の一端を担うくらいの気概で広報を打ち出していく・・・ということも広報上の検討課題ではないでしょうか。規制緩和が進む中、コンプライアンスはもはやブレーキではなく、スピード経営を支えるためのアクセルとして活用する時代です。
もちろん法令違反のリスクはあります。リスクが顕在化した場合には、トライ&エラーで真摯にリスクに向き合わなければなりません。東洋経済の報じるところでは、8月14日の時点では、ネスレ日本から消費者庁への照会に対して、同庁からの回答はない、とのこと。消費者行政の方向性をつかみ、コンプライアンス経営の向上を目指して消費者と向き合う企業の姿勢は、これからソフトロー重視に向かうのか、それともハードロー重視に向かうのか、このたびのネスレ日本さんの対応は重要な試金石になるのではないかと期待しています。【了】
山口利昭(やまぐちとしあき)/山口利昭法律事務所代表弁護士。大阪府立三国丘高校、大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(平成2年登録 司法修習所42期)。現在、株式会社ニッセンホールディングス、大東建託株式会社の社外取締役を務める。著書に『法の世界からみた会計監査 弁護士と会計士のわかりあえないミソを考える』 (同文館出版)がある。ブログ「ビジネス法務の部屋」(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/)より、本人の許可を経て転載。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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