【鈴木雅光の投信Now】上昇続くJ-REITに盲点はないのか

2014年8月26日 13:33

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

  東証に上場されているJ-REIT市場が活況だ。8月25日時点の東証REIT指数は、1640ポイント。終値ベースでは、昨年3月27日につけた1700ポイントに、徐々に近づいている。市場関係者の間では、年内1800ポイントという声も聞こえてくる。

  好材料は、不動産市況が回復基調にある点だ。特にオフィスビルの平均空室率は、2012年6月に9.43%まで上昇していたが、そこから徐々に低下傾向をたどり、2014年7月には6.20%まで落ち着いてきた。空室率が低下すれば、次は家賃の引上げが可能になり、オフィスビルを組み入れたJ-REITの収益性が高まる。

  ただ、一方で投資家の動きにも変化が見られ始めてきた。投資家別の売買動向を見ると、これまで買いの主体だった銀行と投資信託の動きが鈍ってきている。銀行は売り買いがほぼトントンになり、投資信託は急激な売り越しに転じてきた。

  なかでも銀行に関していえば、J-REITの平均配当利回りと、10年物国債利回りのスプレッド縮小が響いているようだ。基本的に、両者のスプレッドが3%程度あると、銀行はJ-REITの価格変動リスクを許容したうえで、長期国債よりもJ-REITでの運用を選好すると言われているが、8月25日時点でJ-REITの平均配当利回りは3.41%。これに対して10年物国債利回りは0.505%で、スプレッドは2.91%まで縮小している。スプレッド3%割れは、銀行のJ-REIT投資への選好意欲を後退させる。

  年末にかけての注目ポイントは、外国人投資家によるJ-REITへの投資意欲が盛り上がるかどうかだろう。外国人投資家は徐々にJ-REITを買い越してきている。彼らはスプレッドよりも家賃動向に注目しており、ここに来てオフィスビルの空室率が低下していることに目を付けている。ちなみに2006~2007年にかけて、東証REIT指数が2000ポイントまで上昇した背景にあったのは、賃料相場上昇を材料にした外国人投資家の買いだった。外国人投資家の買い越しが続けば、年内1800ポイント乗せの可能性が高まりそうだ。(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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