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【8月9日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
■安倍政権の成長戦略の中身は見かけ倒し
安倍政権が株価の動向に注力していることは明らかだが、株価が日経平均2万円をこえる展開にならないのは、第三の矢といわれる成長戦略の中身が見かけ倒しだからだ。実際に、法人税率の引き下げの動きも中途半端で、今後は株価が低迷する可能性をささやかれる。
そもそも法人税率の引き下げが、主張されているのは、国際的に日本の法人税が高く、競争力の高い国際企業ほど特に本社機能や海外生産を国外に移転させる傾向にあり、低税率の法人税の国と比較して、国内投資の競争力をそぐ結果となっているからだ。安倍政権は数年の内に20%後半の水準への引き下げを検討しているようだが、シンガポールや台湾と同じ15%程度の水準に引き下げなければ、海外流出した投資が日本に戻ってくることはないと筆者は考える。
実際に、法人税率を大きく下げたリヒテンシュタインやアイルランドには、世界中の資本が流入している。ケイマン島やバミューダ島のように法人税を廃止して、付随した収入を稼ぐ地域では、一人あたりのGDPや経済成長率がトップクラスであることを考慮すると、法人税の廃止は、日本全体での税収も増やす可能性も高い。
法人税は、ノーベル賞学者の故ミルトン・フリードマン(シカゴ大学教授)が指摘しているように、「非合理な税」であることは、経済学者や金融の専門家の間では常識的意見だ。しかし、法人税廃止を言うと「大企業優遇」であるかのような印象を一般有権者は受ける。
実際、他の先進国でも、法人税の廃止は、そう簡単には実現しない。
もし、大企業優遇の是正を言うなら、日本では大企業のみに事実上適用されている租税特別措置(租特)を廃止するべきだ。
通常は左翼と位置付けられる米国のロバート・ライヒ元労働長官(クリントン政権)も、法人税の廃止を主張していることは、もっと注目されてよいと思う。
■法人税には二重課税の側面
法人税は、法人が最終的には個人の所有であるにもかかわらず、法人で一度課税し、さらに個人が法人からの配当等に課税されるという、二重課税の側面があり、非合理的かつ非効率である。
第一に、法人税は、負債を増やすバイアスを与え、企業金融を非効率化する。
借金をすれば金利分は経費として控除されるので、その分税金を払わなくてよくなる。法人税がなければ、借入金より株式発行が本来は効率的な資金調達の場合でも、負債による資金調達を選択するバイアスがかかる。
第二に、所得税の税率が低いはずの低所得者が会社の所有者になっている時も、法人税には一定の税率が課されると、その点でも法人税のバイアスがある。
もし野党が、明確に法人税廃止を主張して選挙を戦えば、国際的にも、高く評価されるだろう。原発廃止などのポピュリズムでは、多数派が取れないことは、2012年の生活の党やみんなの党の得票率を見れば明らかだ。
世界からも、「日本も変わった」と思われるだろう。【了】
やまぐち・りょう/経済コラムニスト
1976年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、現在、某投資会社でファンドマネージャー兼起業家として活躍中。さくらフィナンシャルニュースのコラムニスト。年間100万円以上を書籍代に消費するほど、読書が趣味。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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