【経済分析】巨人軍と景気の不思議な関係(下)

2014年7月1日 15:48

印刷

記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【7月1日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

(以下は、(【経済分析】巨人軍と景気の不思議な関係(上)からの続き))

日本のプロ野球ファンで一番多いのはおそらく巨人ファンでしょう。私が調べた1996年当時の読売新聞社の世論調査では、全国のおよそ3人に1人は巨人ファンとの結果が出ています。

巨人が勝てば巨人ファンである多くの企業経営者の投資意欲が高まり、また消費者の財布のヒモが緩むのではないか。巨人の勝利が人間心理の高揚を通して予想以上に多くの経済主体のマインドを好転させ、それが経済の活況につながるのではないか。特に中小企業の場合には経営者の一存によって経営判断がなされるケースが多いだけに、経営者のその時々の心理状態が経営に与える影響は予想以上に大きいのではないか。中小企業の売上と巨人の勝率が密接に連動している事実はこの辺の事情を物語っているのではないか。私は当時、そんな理由を考えました。

一方では、「景気が良くなれば巨人ファンの応援が盛り上がって巨人の勝利に結びつく」という逆方向の因果関係も考えられます。

このように、様々な因果関係を考えることができるけれども、どうも決め手に欠ける。それでいて見事に連動している事実を目の当たりにして、ただ「不思議」と表現するしかない、理屈を超えたところにこそ経済の真実の姿があることを感じさる点では、景気とエルニーニョの関係に非常に近いものがあります。

さて、それでは今年の巨人と景気の関係はどうでしょうか。

このグラフ(図2)が、今シーズンのこれまでの月別勝率(6月は27日まで)と中小企業売上げDIです。

巨人は5月前半まで調子が上がらず勝率も緩やかに低下する中で、首位広島を追走していましたが、5月後半から始まったセ・パ交流戦で調子を上げ、交流戦で2年ぶりに優勝を果たしました。現時点で2位広島とは2.5ゲーム差をつけて首位に返り咲いています。

一方、景気の方を見ると、中小企業売上げDIは消費税引き上げ前の駆け込みの反動で4月に大きく落ち込んだ後、5月に持ち直し、昨日発表された6月の売上げDIは▲0.1と5月の▲5.9からさらに改善しました。景気が消費増税直後の落ち込みから持ち直すのに合わせて巨人の勝率も上がってきたと解釈することができます。

巨人の勝敗は株価の動きともかなり関係があります。日経平均は5月19日に一時14000円を割れたものの、終値で14000円台に踏みとどまり、そこから急速に持ち直してきました。そのタイミングがちょうど交流戦が始まった時期と重なります。翌20日の交流戦の初戦で巨人は西武に9-1で快勝し、そこから流れが大きく変わったように思えます。相場の流れが変わったのと軌を一にしています。

巨人の勝敗は足元の景気を反映し、勝敗がリアルタイムでわかるので、速報性に優れた景気の一致指標と言えます。巨人がこのまま首位をキープできるかどうか、景気の行方を占う上で巨人の試合から目が離せません。【了】

野田聖二(のだせいじ)/埼玉県狭山市在住の在野エコノミスト
1982年に東北大学卒業後、埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)入行。94年にあさひ投資顧問に出向し、チーフエコノミストとしてマクロ経済調査・予測を担当。04年から日興コーディアル証券FAを経て独立し、講演や執筆活動を行っている。専門は景気循環論。景気循環学会会員。著書に『複雑系で解く景気循環』(東洋経済新報社)『景気ウォッチャー投資法入門』(日本実業出版社)がある。著者のブログ『私の相場観』より、本人の許可を得て転載。

■関連記事
【経済分析】巨人軍と景気の不思議な関係(上)
【経済分析】巨人軍と景気の不思議な関係(下)
【提言】塩村あやか都議が牛角の被害、MBOの影響か

※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。

関連記事