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【経済分析】計量モデルでなぜ経済は予測できないのか(上)
【5月31日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
日経新聞の『やさしい経済学』に、日本大学教授の小巻泰之さんがマクロモデルによる経済予測について連載記事を書かれています。
エコノミストやシンクタンクがどのように予測を行っているのか興味を持っている読者もいらっしゃると思いますので、「経済予測の方法」とそれに対する私の考えを何回かに分けて書いてみたいと思います。
まず何はさておき、過去のシンクタンクの経済予測がどれだけ当たっているのかを確かめてみたいと思います。
少々データは古くなりますが、このグラフは1993年度〜2003年度のシンクタンクのGDP成長率の予測平均値と実際の成長率を比較したものです。シンクタンクの予測が実際の成長率にきれいに1年遅れて動いていることがわかります。
これはシンクタンクの予測が足元の景気(成長率)に大きく左右されるからだと考えられます。要するに、足元の景気が良くて成長率が高いと、シンクタンクは、「来年度も景気は良い状態が続くだろう」と考えて強めの成長率を予測し、逆に足元の景気が悪いと、「来年の景気もそんなに良くならないだろう」と考えて低めの成長率を予測する傾向が強い、ということです。しかし、現実の景気はシンクタンクが予想しなかったような大きな変化をみせます。その結果、グラフにみるように、シンクタンクの予測は実際の成長率を後追いする形となってしまうのです。
シンクタンクが予測に用いているのが、『やさしい経済学』にも書いてあるように、様々な変数の関係を表す「マクロモデル」です。ここでは、ある国の経済活動(GDP)が個人消費と設備投資だけの最も簡単なケースを使って、経済予測の原理を説明してみましょう。
まず、予測の前提条件として、ある国の企業が行う設備投資が100兆円であることがわかっているものと仮定します。この時、GDPは次のように数式で表すことができます。
Y(GDP)=C(個人消費)+100兆円(設備投資)… ?
この式だけではC(個人消費)がわからなければY(GDP)は算出できません。しかし、過去の経験から、GDPの6割が個人消費であることがわかっているとします。つまり式で表すと、
C=0.6Y … ?
?の式を?に代入すると、Y=0.6Y+100兆円 となり、計算するとY=250兆円、C=150兆円と答えが出てきます。
このように、ある項目の数字がわからなくても、その項目と他の項目の関係(?の式)がわかれば、連立方程式を解くことによりすべての項目が判明するのです。【続】
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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