【コラム 高田英樹】日本の財政の「真実」:序論(下)

2014年5月20日 16:08

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【5月20日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

●隠れ資産は債務超過

 この歳出と税収のギャップは、公債発行、すなわち借金によって賄われている。図2のように、この借金は右肩上がりで積み上がり、今年度末には国の分だけで800兆円近く、地方分を合わせた長期債務は1000兆円にも上る。これは、国民一人当たりで割れば600万円を超える金額だ。この借金は、将来の我々自身が、そして、さらには、まだ生まれてもいない子どもや孫の世代が負担しなければならないのである。

こうした数字に対して、「借金の大きさばかりが強調されるが、国には膨大な資産がある」と指摘されることがある。

確かに、国には巨額の資産もある。図3は、企業会計の手法を用いて作成した「国のバランスシート」として公表されているものだ。これによれば、600兆円を超える資産があるが、その中には、道路や港湾など、換金して借金の返済に充てることのできないような性質のものも多く含まれていることに留意しなければならない。そうしたものを含めても、477兆円もの債務超過になっており、深刻な状況であることに変わりはない。

では、なぜこのような状態になってしまったのか。それは、前述の図1に端的に表されている。

第一に、高齢化の進展等による社会保障費の増大を主な要因とする、歳出の増加だ。

そして第二に、その財源たる税について、歳出の増加に十分見合うだけの手当てがなされず、逆に減税なども行われてきた結果、税収が恒常的に不足してきたことである。しかも現在、「団塊の世代」が65歳を超える時期にさしかかっており、今後、高齢化とそれに伴う社会保障の拡大はさらに進んでいく。

こうした状況に対処する「第一歩」となるのが、今回の消費税率引上げを含む、「社会保障と税の一体改革」である。本年4月に実施された消費税率の8%への引上げ、そして来年10月に予定されている10%への引上げは、増え続ける社会保障費について、財源を確保するために行われる。

次回以降、さらに詳しく、このテーマを論じていきたい。【了】

 注1:図表はすべて出所は財務省より
注2:本稿は、個人として執筆したものであり、組織の見解を代表するものではありません

 たかだ・ひでき/1995年に東京大学法学部卒業後、財務省(旧大蔵省)に入省。1997年から99年に英国留学。2003年から06年に、英国財務省で勤務。2009年に民主党政権下で新設された「国家戦略室」の最初の職員として抜擢された。主計局、主税局等で、主に財政政策に携わっている。

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