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TPP交渉―煮え湯を甘んじて飲む自動車産業と「聖域」化する農業
難航していたTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉において、日米が合意できる可能性が高まっている。このTPP交渉についての報道では、農業のクローズアップが目立った。特に大きく取り上げられたのが、コメ、麦、乳製品、牛・豚肉、砂糖の原料(テンサイ、サトウキビ)のいわゆる重要5品目の関税の行く末である。
しかし、集中する農業についての報道の陰で大きな譲歩がなされた産業があったことはあまり知られていない。譲歩がなされたその産業こそ、自動車産業である。アメリカ側の担当者米通商代表部のフロマン代表の、上院財政委員会の通商政策に関する公聴会における「農業分野と自動車貿易という、この交渉の中でも困難な分野で進むべき道が定まった」というコメントは、農業とともに自動車産業が自由化の標的であることを示している。
このようなアメリカの要求に従い、日本はこれまで市場を守ってきた「安全性」「燃費」「騒音」といった非関税障壁(関税以外の方法による貿易の制限)の緩和を検討しているとされる。自動車産業はなぜこのような「煮え湯」を飲むことにしたのだろうか。その答えを端的に表現しているのが、トヨタ<7203>自動車代表取締役・日本自動車工業会長の豊田章男氏の次のようなコメントだ。
「日本のTPP参加は、日本経済再生の鍵であり(中略)出来るだけ早期に交渉に参加することが重要と考えている。今般、TPP交渉参加に関する米国との事前協議の結果、関税の撤廃時期については残念であるが、TPP交渉への早期参加の重要性など総合的な見地から、一定の合意に至ったと承知している」
つまり、自動車産業は「日本経済再生」のため、「総合的な見地」から合意を受け入れたのである。日本経済について総合的に検討し業界の不利益を甘んじて受けるこのような選択肢は、TPP交渉に反対する農業界には存在しない。自民党の幹事長が何度も「5分野の関税は撤廃しない」と約束させられる様子は、あたかも農業が「聖域」であるかのようだ。
甘んじて煮え湯を飲む自動車産業と「聖域」であることを望む農業、TPP締結後のグローバル経済でそのどちらが勝ち残っていくかは火を見るよりも明らかだ。自動車産業は世界を舞台に数多くの荒波にもまれながらシェアを獲得してきた。農業も、今こそ世界に目を向け、守りから攻めへと転じるべきだろう。(編集担当:久保田雄城)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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