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【5月6日、さくらフィナンシャルニュース=東京】全ての委員会が、このようにぎりぎりまで日程が決まらないというわけではない。
予算審議時の予算委員会のように、与野党の政治的対決の焦点となるものを除けば、多くの委員会は数日前には開催予定が決まっている。
そのような場合に、前々日までに質問を用意して通告することは決して不可能とは思われないし、仮に直前に多少の追加があるとしても、質問の大半を通告しておくことは十分できるはずだ。このように、現状の国会運営を前提としても、できる改善はいくらでもある。
これは決して、国会審議を無くすとか、減らすということを言っているものではない。
今と同じ国会審議を行うとしても、多少合理化する余地があるのではないかということだ。これにより国会業務の負担を軽減することは、もちろん家庭・育児との両立という観点からも重要だが、それ以上に、公務員の時間と能力をより政策立案に集中させることが可能となり、ひいては国民に資するものといえる。これに反対する論理を自分は思いつかない。
ここで冒頭の話に戻ると、自民党は今般、質問通告を前々日の18時までに行うことを申し合わせた。これは、ここまで述べてきたような状況からすれば、大きな一歩といえる。
もちろん、審議の大半は野党の質疑であるため、野党にも同じような取組みをしてもらわなければ、本当の改善にはつながらない。
しかし、これまでは、与党議員でさえ、特段の悪気もなく、多くは前日に質問通告を行っていた。与党自らルールを守って初めて、野党に対しても申し入れることができる。また、まず与党で試してみれば、何が実務上のネックになるのかも分かってくるはずだ。
本件については、私自身も、国会業務の実務を担当する立場から間接的に協力させていただいたが、まずはできることをやっていこうという、極めて現実的かつ前向きな取組みと考えている。
今後、まずは与党でこれがどれだけ実践されるか、見守っていく必要がある。
そして何より重要なのは、折角出てきたこの動きを持続させ、さらに強化していくことだ。
質問通告のルールが法令で決まっているわけではなく、単なる慣習に過ぎない。しかし、慣習であるからこそ、それを変えていくためには、大きな、そして継続的なエネルギーが必要だ。取組みを始めたばかりのときは皆意識するが、少し放っておけば、すぐに元に戻って、何事もなかったかのようになってしまうだろう。
現状を変えるには、それを言い出すことも大事だが、言い続けることがより重要であり、かつ難しい。
だが、質問通告の早期化は、仮に実現すれば、全ての官僚にとって悲願といってもよい業務環境の改善につながりうるものだ。今回、官僚の中でも特に、「子育てをする女性職員」の観点から、改善に向けた声があがったことは大きい。今日において、その声を無視することはできないはずだ。
そして、少なからぬ議員の先生方が、その声にすぐに呼応して下さったのも画期的である。大げさかもしれないが、歴史的な改革へ向けて、またとない好機が訪れているように思う。【了】
たかだ・ひでき/東京都出身。1995年、東大法学部卒業後、財務省(旧大蔵省)にて勤務。 1997年から99年まで英国留学。 2003年から英国財務省に出向。主計局を中心に、財政制度の企画立案、科学技術・スポーツ予算の査定、特別会計の見直しなどに携わる。上記記事は日英行政官日記から本人の許可を取った上で転載。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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