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【5月6日、さくらフィナンシャルニュース=東京】4月23日、世間ではほとんど注目されていないが、霞ヶ関の公務員にとっては耳よりなニュースがあった。
昼に行われた自民党の、国対と各委員会の委員長の懇談会で、女性職員の家庭・育児との両立を支援する観点から、「質問通告を委員会の前々日の18時までに行う」との申し合わせがなされたのである。
こういっても、霞ヶ関の公務員を除いて、何のことを言っているのか分かる人はほとんどいないだろう。日々、国会では審議が行われているが、議員が各大臣に対してどのような質問をするかは、事前に役所側に知らされるしきたりとなっており、これを「質問通告」という。これを受けて、官僚があらかじめ質問に対する答え(「答弁」)を作成し、大臣に持たせるのである。あらかじめ質問とそれに対する答えが決まっているというのは奇異に思われるかもしれないが、こうした事前の準備がなければ、どこを聞かれるか分からない質問に対して、即座に政府として責任ある答弁を行うことは難しい。
また、質問内容をどの程度詳細に知らせるかは、議員によって異なり、特に野党の場合は、ごく抽象的な内容しか教えてくれない場合もある。ある程度具体的な質問通告がなされた場合であっても、政府側の答弁に対してさらに追及がなされることは普通であり、審議には常に一定の緊張感がある。
この質問通告がなされるのは、ほとんどの場合、委員会で審議が行われる前日であり、しかも夕刻以降になるケースも多い。そうすると、役所側では、どの部所に関係する質問が来るか分からないため、基本的には全ての部所が、すぐ対応できるよう待機している必要がある。特に、予算委員会のように、どの大臣に対しても質問できる委員会の場合、全省庁が待機することとなる。
翌日の審議で質問に立つ議員全員の質問内容が判明して初めて、待機は「解除」されるが、この時点で深夜に近くなっていることもしばしばある。
しかし、さらに大変なのは質問通告の後だ。
通告された質問は、その答弁作成を担当すべき省庁、部局、そして部局内の課室、最終的には末端の個人レベルまで割り振られていく。この「割り振り」のプロセスにもけっこう時間がかかる。
担当部局がはっきりしている質問ならばよいが、多くの質問は、内容が複数の省庁・部局に関係しており、部局間で「割り振り争い」(押し付け合い)が恒常的に発生するからだ。
そして、質問内容と、その担当者が確定してはじめて、答弁の作成作業が始まる。
この作業も、質問の内容や担当者の要領によって大きく変わるが、ひとつの答弁に数時間かかることは珍しくない。そして、作成された答弁書は、取りまとめ部局(例えば財務省の場合は大臣官房の文書課)に提出され、さらに取りまとめ部局や大臣の秘書官によるチェック(「審査」)が行われる。
作成担当部局から上がってきたばかりの答弁は、どうしても「担当者目線」になりがちであり、総理や大臣が答えるにふさわしい内容とするために、「審査」の作業もある程度は欠かせない。【続】
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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