超高齢化社会の到来に向け、活発化する介護ロボット開発

2014年3月2日 19:17

印刷

記事提供元:エコノミックニュース

 内閣府が公表している「平成24年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況」によると、我が国の総人口は平成24(2012)年10月1日現在、1億2,752万人で、その内65歳以上の高齢者人口は過去最高の3,079万人(前年2,975万人)となっており、諸外国と比較すると、この時点ですでに、我が国は世界のどの国もこれまで経験したことのない高齢社会を迎えている。さらにこの先も増加の道を突き進み、2060年には、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳になると予測されており、15歳から64歳の現役世代1.3人につき1人の高齢者を支える社会の到来を示唆している。

 来るべき超高齢社会に向け、老老介護や介護者の負担増加などが懸念される状況の中、大きな期待が寄せられているのがロボット技術だ。矢野経済研究所が1月に発表した「介護ロボット市場に関する調査結果 2013」によると、2012年度の介護ロボット市場規模は前年度比137.1パーセントの1億7,000万円となっており、高い伸びをみせている。

 とはいえ、市場の絶対額としてはまだ大きくはなく、介護現場にほとんど普及していないのが実態だ。同調査では、わが国の介護ロボット市場が本格化するのは、介護保険制度の見直しが予定されている2015年度以降とみており、メーカー出荷金額ベースで、2015年度に23億円、2020年度には349億8,000万円にまで拡大すると予測している。いずれにせよ、超高齢化社会を迎える我が国にとって、介護ロボットの開発と実用化は急務だ。

 また、経済産業省と厚生労働省による「ロボット技術の介護利用における重点分野」に沿った取り組みが進むほか、我が国の「生活支援ロボット実用化プロジェクト」で得られた成果が採用された、生活支援ロボットの国際安全規格ISO13482が発行されるなど、介護分野でのロボット活用が活発化している。今後の日本の成長戦略の一つとしてロボット技術にも期待が高まる。

 ひとくちに介護ロボットといっても、大きく三つに分けられる。まず、入浴や排泄、移乗など介護業務の支援をする、文字通りの介護支援型ロボット。そして、歩行やリハビリ、食事、読書など、介護される側の自立支援をする自立支援型ロボット。そして、会話の相手や癒し、見守り支援を行うコミュニケーション・セキュリティ型のロボットだ。これらの分野で各企業が開発を行っているわけだが、この度、大変興味深い共同研究・開発計画が発表されて話題になっている。

 住宅メーカー最大手の積水ハウス<1928>と医療用機器やロボットなどの開発を手掛けるマッスル株式会社は2月17日、ロボット技術の導入による高齢者在宅介護支援や、人とロボット双方の得意分野を生かすことができる住空間、自然に共存できるロボットのあり方などについて、共同研究・開発を行っていくことを発表した。両社はこの他にも、住宅内におけるロボット技術の応用に関して、マッスル社のモーションコントロール(制御システム)技術を活用し、昨今、注目が高まっている「HEMS」での温熱環境制御に合わせた開口部の開閉自動制御や設備機器類の高さ制御、玄関の段差解消など、住宅の可変性の向上についても共同研究・開発を行うという。

 具体的には、積水ハウス総合住宅研究所 納得工房の施設を中心に共同研究と検証を開始し、2014年内には実際の居住空間での検証を行う。その後は積水ハウスの顧客によるモニター実証実験等を実施し、2015年末をめどに「共創」による技術の実証やビジネスモデルの確立を目指す。

 老いは誰にでもやってくる。最期を迎えるその時まで、できる限り自宅で過ごしたいと願う人は多いだろう。その為にも今後は益々、日本だけでなく世界の国々で介護ロボットの開発は活発に行われていくだろう。ロボットは今や未来の技術ではない。最新の医療・介護サービスなのだ。(編集担当:藤原伊織)

■関連記事
介護ロボット機器の安全基準など1年以内に整備
おむつやばんそうこうに装着するセンサが登場 東大らが開発
高齢者のための“施設”ではなく、自由に住まうことが出来る“住居”を提供する──積水ハウス
マイナンバー導入で、国民の生活はどう変わる?
最先端技術を活かした、新しい日本の「家」のカタチ

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

関連記事