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世界シェアトップ企業から「第2の東エレク」、「第3の東レ」にアプローチ=浅妻昭治
【浅妻昭治のマーケット・センサー】
毎度、兜町の目敏さ、反射神経の速さ、フットワークの軽さには驚かされ、出し抜かれる。今度は何に舌を巻いたかといえば、前週末27日の日本M&Aセンター<2127>(東1)とGCAサヴィアン<2174>(東1)の急動意である。いずれも東証1部値上がり率ランキングの上位に顔を並べる高人気となった。この急伸は、9月24日の東京エレクトロン<8035>(東1)、27日の東レ<3402>(東1)と相次いで発表された「内-外」型の大型M&Aを引き金にしたことは間違いない。
全般相場は、米国の来年度予算を巡る与野党の対立による円高進行や、きょう1日に安倍晋三首相が表明予定の消費税増税などで先行き株高、株安のいずれに転ぶは予断を許さないが、M&A仲介会社2社の株価急騰は、そうした不透明環境下でも、引き続き兜町の目敏さ、反射神経、フットワークが引き続き機敏に発揮されることを示唆しているようである。
東エレクは、半導体製造装置で世界トップの米国アプライドマテリアルズと三角合併により経営統合し、東レは、炭素繊維で世界3位のゾルテック(米国ミズーリ州)の全株式を総額5億8400万ドル(約580億円)で取得し子会社化したのである。いずれもその分野での世界的な競争力を一段と強化することを目的にした強者連合であり、業界再編が、国境を越えグローバル化した合従連衡にまでレベルアップしたことを表していた。東レはさらに韓国の水処理膜メーカー・ウンジケミカルの52.2%の株式取得、連結子会社化まで発表、MA&総額は1000億円にものぼった。
とにかく日本の企業は、今年6月末で現預金を220兆円も溜め込んでいるのである。この相次いだ大型M&Aが、業界上位企業を刺激して世界的な業界再編に乗り出せば、M&A仲介会社の日本M&AセンターやGCAサヴィアンに大型案件の依頼が入りシコタマ成功報酬を手にできるとの早読みで両社株に買いを入れ、値幅効果を満喫したのである。両社の仲介案件に止まらず、今後、どの業界のどの企業が世界的な再編を仕掛けるか、あるいは逆に「外-内」型の再編を仕掛けられるかは、兜町の株式テーマとなるはずで、この動向に備えて、今回、M&A仲介会社2社で早仕掛けに成功した投資家に負けず劣らずの早読み、深読みをしなければならないことはいうまでもない。
もちろん世界を舞台にしたM&Aが、すべて今回の東エレクのようにストップ高するように兜町で無条件で歓迎されるとは限らない。空振り、失敗、経営の重荷になった例も少なくない。かつての資産バブル時代に某大手不動産会社が、ニューヨークのランドマークとなる大型ビルを高値で掴まされて、安値で投げさせられた例もあるし、日本板硝子<5202>(東)の英ピルキントン買収は、いまだに業績、株価に目立った効果を与えているとはいえない。また、兜町もシビアで、M&Aにも良いM%Aと悪いM&Aがあると選別し、悪いM&Aは、財務内容の悪化、財務負担が懸念されるとして売り込んだりするから注意が必要だ。
こうした前提に立ったうえで、兜町の目敏さ、反射神経、フットワークを上回って「第2の東エレク」、「第2の東レ」をリサーチしたいというのが、今回の当コラムのテーマである。状況もM&A向きの追い風が強くなる方向にある。きょう1日の安倍晋三首相が、発表する予定の消費税増税は、新経済対策とペアになっており、その経済対策に法人税減税が盛り込まれるとみられているからだ。法人税減税は、与党内の公明党との間でも企業優遇寄りとして政治的なすれ違いが伝えられ、減税額が、内部留保に回ることなく賃金上昇や設備投資など充当されるよう条件付きとなる政治的な調整がギリギリまで進められており、このなかに当然、M&Aも含まれてくる。今年3月の春闘前に安倍首相が呼び掛けた賃金引き上げ要請に対して、ローソン<2651>(東1)などの率先して要請に応えた企業が続出、「アベノミクス」のブーム化に一役買った再現も期待されることになる。
アプローチする銘柄への照準は、極くシンプルである。東エレクや東レと同様に世界シェアのトップ企業のなかから有望銘柄に当たりをつけるのである。自動車トップのトヨタ自動車<7203>(東1)、タイヤでトップのブリヂストン<5108>(東1)が代表株で、ブリヂストンはすでに大型M&Aを経験済みだが、これ以外にも世界シェアトップ企業は枚挙に暇がないのである。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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