「山高ければ谷深し、谷深ければ……」で6月月間下落率上位銘柄に再登攀思惑も=浅妻昭治

2013年7月1日 09:38

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

 「ジャパン・パッシング(日本通過)」的な相場推移である。日本を通り越して頭越しに米国と中国の間で株安材料が飛び交って、5月、6月と為替レートは、1ドル=93円台まで円高となり、日経平均株価は、3500円幅の急落となった。米国、中国の中央銀行の金融緩和縮小懸念や、資金供給抑制・銀行の資金繰り不安などの海外悪材料(黒船)に振り回され、相変わらずの「たった四杯で夜も眠れず」の為体で、東京市場の存在感は薄れる一方となり、サンドバッグ状態を余儀なくされた。

 しかしである。ここは6月17~18日の主要8カ国首脳会議(G8)で安倍晋三首相が表明したように、「世界経済に貢献する」アベノミクスのネジを巻き直して、東京市場の独自性をアピールするチャンスだろう。それでなくても7月は、4日を公示日、21日を投開票日に参議院選挙が実施される政治イベントが控えている。東京都議会選挙で、候補者全員当選の圧勝をした安倍自民党としても、参議院の「ねじれ現象」解消に向けて、株安よりも株高をキャンペーン材料に連勝を狙いたいところだろう。5月、6月と続いた波乱相場が、7月の「梅雨明け相場」からサマーラリー」につながる展開は、兜町でも永田町でも誰も異論のないこととなる。

 そうなると、問題になるのはその東京市場の独自材料である。オーソドックスな独自材料は、「アベノミクス」効果の再訴求・再アナウンスだろう。きょう1日寄り付き前に発表の日銀短観で景況感の回復を確認できれば、このあと7月下旬から本格化する上場企業の第1四半期決算の開示とともに、相次ぐ業績の上方修正が独自材料であり、これを先取りして業績相場が発進する正統派の相場シナリオである。この中心は、証券各社の証券アナリストがカバーしている輸出関連の主力銘柄ということになり、投資判断や目標株価の引き上げが、株価加速要因となることは間違いない。

 この主力株を7月相場のポートフォリオから外すことは、まず考えられないが、これと並んでもう一つ注目したいテクニカル的な独自材料がある。「山高ければ谷深し、谷深ければ山高し」で大きく急騰し大きく急落した銘柄のリバウンドである。5月、6月相場での株価急落で大きな谷を形成した銘柄が、「下げた株ほどよく戻る」とする「リターンリバーサル」買いで、もしかしたらもう一度、急峻への再登攀を開始する可能性がないか試してみたいということである。

 というのも、6月の東証第1部月間騰落率ランキングで、下落率ランキングの上位に興味深い銘柄が並んだからだ。ワーストワンとなったフルキャストホールディングス<4848>(東1)は、逆に5月の月間上昇率ランキングで第5位に躍進、逆行高した銘柄であった。5月末割り当てで実施した株式分割(1対100)を歓迎して年初来高値3万7800円まで急騰したものの、5月31日終値に対して分割権利落ちを勘案しても約40%の急落となった。また、下落率第2位となったアイロムホールディングス<2372>(東1)は、4月の月間上昇率ランキングで第4位にランクインした銘柄であった。

 「山高ければ谷深し」で独自高、逆行高した銘柄が、反動でその上昇分もすべて吐き出してしまったのである。なかには、サニックス<4651>(東1)のように5月のランキングで第2位となり、さらに6月も上昇ランキングの11位と健闘した銘柄もあるが、7月相場で、「谷深ければ山高し」となる展開が 期待できるとしたら、6月の月間下落率の上位銘柄は、逆に大きなリバウンドをしないとも限らないのである。その観点から6月の月間下落率上位銘柄を一覧すると、意外と存在感を主張する銘柄も多く、ここはぜひマークしておきたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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