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5月末から発生しているトルコの反政府デモが史上最大規模となっている。先週末には数千人のデモ参加者がイスタンブール中心部にあるタクシム広場に集まり、無言で立ちつくす「沈黙のデモ」を行った。強硬な姿勢を示している政府側は警官隊を出動させ、放水車や催涙ガスで、人々を広場から強制排除した。
民族や宗教が異なる国民がそれぞれ、エルドアン首相の強権主義的な独裁政治に反発している。
海外各紙は伝統に則った近代国家を目指す首相の意向と時代の流れを照らし合わせながら、トルコの過渡期として報じている。
【グローバルな反発?エルドアンの主張】
エルドアン首相は北部サムスンで開催した支持者集会で、デモ活動の黒幕は、昨今の好調なトルコ経済に打撃を与えようとする「ロビイスト」だと訴えたとフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。
ロビイストについて具体的な実態は言及されていないが、これまでの発言から、国内の個人銀行や国際的な金融機関、イスラエルなどを示していると同紙は推測している。
また首相は、ブラジルでサッカーW杯の開催は無駄な支出だと反発するデモが勃発していることも取り上げ、この反政府運動の背景にも同じロビイストがいると述べているようだ。エルドアン首相は、ブラジルのデモの様子やツイッターなどのソーシャルメディアを活用した手法が自国の例と同じだとしながら、「トルコで得られなかった結果をブラジルで達成しようとしている」と主張。あくまで、両国のデモ参加者らは、ロビイストに利用されていると訴えている。
またエルドアン首相は、主要野党・共和人民党(CHP)のクルチダルオール党首も非難している。フィナンシャル・タイムズ紙によると、デモ勃発を理由に欧州連合(EU)加盟交渉が一部中止する見通しとなったことに対して、クルチダルオール氏は、その動きを主導しているメルケル独首相に交渉中止を考え直すよう直訴したという。
エルドアン首相は、クルチダルオール氏が、国内情勢の安定化よりも海外事情を優先するような人物であると批判しているようだ。両者間では、デモを利用してお互いを攻め合うことで国民の支持を得ようとする動きがあるが、現時点では双方とも思惑は達成できていない模様だ。
【EU加盟など、近代化への過渡期ゆえの混乱か?】
エルドアン首相は就任以来、EU加盟に向けて、死刑の廃止や少数民族クルド人との和解に向けた政策、軍部権力の除外、好調な経済成長など様々な実績をあげてきた。
しかし今、同氏が直面している最大規模の反発は、トルコがその将来をかけた過渡期にあることを象徴しているとニューヨーク・タイムズ紙などは分析している。対立するイスラム主義と世俗主義、権力と民主制を取り上げ、国内では「トルコがEU加盟国らしい国家となるのか、厳格な宗教国家となるのか」とその行方に注目した報道もあるという。
またブルームバーグ紙では、明治時代の日本と同様にトルコも文明開化を望んできたが、自国と西洋の両文化を活かせずにきてしまったことが逆に政治的・文化的混乱を招き、近代化の妨げとなっていると作家パムク氏の言葉を取り上げている。アタテュルク初代大統領が自国の多民族性を軽視し、「トルコ国」や「トルコ人」のアイデンティティを強要してきたところから道がずれてしまったという指摘だ。
タクシム広場開発計画の一環として大型モスクの設計を担当したアルプ氏は、今回の騒動でモスク建設が流れることを避けたいとしながらも、エルドアン氏の伝統に偏った考えに異論を示しているとニューヨーク・タイムズは報じている。伝統的なデザインを要望してきた首相に対して、同氏は「建築は時代を反映すべきであり、昔のオスマン朝モスクのレプリカを造るつもりはないと伝えてきた」と語っているという。
長引くデモにより、トルコでは観光客の減少の他、株価や為替が下落。エルドアン首相がこの事態にどう対応するのか、引き続き注目が集まる。
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※この記事はNewSphereより提供を受けて配信しています。
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