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アールシーコアCORPORATE RESEARCH(15/16):中期的な課題は感性マーケティングそのもの【2】
*19:02JST アールシーコアCORPORATE RESEARCH(15/16):中期的な課題は感性マーケティングそのもの【2】
■今後の課題と注目点
◆中期的な課題は感性マーケティングそのもの
感性マーケティングは、やや中期的な経営課題と位置づけられよう。感性マーケティングは同社の最大の特色でもあり、前述の通り、圧倒的な強みでもある。しかし、だからこそその歯車が噛み合わなくなった際には同社の最大のリスクになりかねない。具体的には、BESS商品が消費者に「好き」と感じられなくなれば、その求心力を失いかねないというリスクである。機能や価格を訴求ポイントとしていれば、競争力の低下に対する打開策は(それが戦略的に最適かどうかは別として)少なくとも見通すことができる。しかし、感性を訴求ポイントにしていると、それが消費者の嗜好と乖離した場合、有効で具体的な打開策が打ち出せなくなってしまう可能性は否定できまい。もちろん、リピーターの数が増加している現在にそういった兆しはないが、このリスクは常について回るもの。落とし穴がどこに潜むかわからない以上、経営陣はその対処策を先手先手で打っていく必要があろう。前述の既存シリーズのテコ入れは、その一環としても位置づけられる。
◆同社の感性と消費者の感性の同期を如何に担保できるか、がポイント
問題は、同社の打ち出す感性と消費者の感性との同期性をシステムとして如何に担保するか、である。現在は、「時代に先んじた感性」を「しがらみのない消費者視点」で提供することに成功しているものの、いつまでも時代の先端でいられる保証はない。むしろ、その神通力はどこかで減衰すると考えるのが自然であろう。また、当初は確かに徒手空拳からのスタートであり、しがらみのない手法を採ることができたものの、社員の多くが最初から住宅事業に携わっている「業界人」へとシフトするにしたがい、新鮮な視点を失い、徐々にしがらみを抱え始めてしまう危惧もある。これは、極めて個性的であった急成長企業の多くが辿ったことのある「大きくなるに連れて、『普通』の会社になっていく」というリスクに他ならない。
◆解を導くための十分条件は既に準備されている
この疑問に対し、経営陣は「ブランドの価値は『独創的であり』『高品質であり』『時代に合わせて変わっていく』ことが必要」とし、「アールシーコアは施工・工事部門を持たないからこそ、そういった柔軟な対応が可能である」と回答している。ブランディングを主軸に置き、販社とのフランチャイズ契約によって自らは施工・工事をしないという方式は(直営でも施工・工事は外注委託)、こういった考えに基づくもの。実際、製造部門は好調な時は利益拡大に大きく貢献するが、不調時には抜本的な事業転換や製品変更の大きな妨げとなった例は歴史的にも枚挙に暇がない。敢えて製造者の視点を持たず、一歩離れた視点を維持することで「いつでも抜本的に変えることのできる」より柔軟なシステムを確立させているのである。
同時に、時代の流れを汲みとるためにも、従前より商品デザインやライフスタイルの提案については社外のデザイナーなどを起用。感性に訴えることのできる体制、またそれへのチェックや軌道修正を随時できる体制を構築している。今後は外部デザイナーの活用をさらに加速させる選択肢も視野に入れている。一方、「(個性を維持するためにも)闇雲に規模を追うことはない」ともコメントしている。経営陣のこのスタンスには高い説得力がある。
ただし、これらは十分条件であって、必要条件ではない。他社を見渡しても、現実には十分条件をシステムとして構築できていても、それがうまく機能しなかったケースもまた少なくないのが現実である。これら懸念への絶対的な解は存在しないが、「異端でメジャー」であり続けるためには、まさにこの「同社の打ち出す感性と消費者の感性との同期性担保」が常に問われることとなろう。
◆「ポスト中期計画」は長期的な課題。どこまでの事業規模を目指すのかという問題が今後は試される
同時に、これはアールシーコアが長期的にどこまでの企業規模を目指すのか、という疑問を投げかけるものでもある。これこそが「ポスト中期計画」の経営課題であると位置づける。そもそも、積極的に「好き」と思ってもらうということは、「好きではない」という層の存在を許容しなければならない。また、「好き」になってもらうことで潜在需要層を絞り込めるという利点はまた、それはターゲット層自体に広がりが少ないということの裏返しでもある。中期計画における展示場の拡大路線は、まだまだ掘り起こし切れていない需要層の発掘との位置づけながら、これが進展すればするほど、どこかの段階でターゲット層の上限に直面する可能性は否めない。年間30万戸超ある木造戸建住宅の着工数からすれば、現状1,000棟規模の成約数では極めてわずかであり、ターゲット層の上限には程遠いとも思われるが、「感性」に共鳴する消費者層がどれだけあるのかが測定不可能である以上、上記の懸念は常に抱えておくべきものと考える。
ポイントはそれを是として、成長の矛先を別の「感性」に求めるのか、あるいは標榜する「異端」の色彩を若干緩めてやや保守的な、しかしボリュームの見込まれる需要層の取り込みに動くのか、であろう。もちろん、後者の選択肢であっても、既存の大手ハウスメーカーとは競合しない程度に「異端」であり続けるのであろうが、このハンドリングは決して簡単ではない。まして、従業員が増え、最初から「業界人」なる人材が増えてくれば猶更である。しかし、事業規模を大きくすればするほど、ボリュームゾーンの取り込みは避けられなくなってくるのも、現実である。今後、会社の規模が大きくなっていくにしたがい、どこをターゲットとするのか、という問題は折に触れて同社の方向性を問うことになると予想している。
◆別ブランドによる展開も選択肢の一つでは?
なお、その解を求めるための具体的な一つの案としては、「別ブランド」による展開のシナリオが考えられよう。BESSブランドは既に確立してきているが故に、将来、あまり冒険もできなくなってくる可能性は否めない。感性の同期化を常に模索する意味で、また、住宅に拘らない「楽しさ」を追求するユニットとして、実験的な別ブランドを設置し、そこで将来の布石を育成していくという流れである。かつて別荘向けでの経験が現在の住宅市場獲得につながっていったように、である。BESSの一環ではあるが、リノベーションのNEWITは明らかにその一つであると考える。当然、これは創業者スピリッツを持った人材の養成にも繋がるはず。現時点で別ブランド展開の具体的な動きは皆無だが、遠くない将来には、こういった「感性の同期化」を検証するツールの設置が求められると予想する。
また、既に同社ではアクションを起こしつつあるが、BESSのモデルハウスで使用しているいくつかの家具(前段で触れた薪ストーブはその典型例)、小物や家具の販売も一つの突破口となるかもしれない。経営陣によると、BESSのファンには、住宅そのものに加え、モデルハウスの雰囲気を「丸ごと」自宅にしたいというニーズは少なくない。これらは住宅事業とは異なるものの、ライフスタイルの提供という視点では違和感のないビジネスとなる。BESSの商品力を活かしつつ、住宅とはまた別の新たなビジネスチャンネルを同社に吹き込む可能性があろう。
ただし、現状の同期性を維持しつつも、これまでの特色を希薄にさせてしまうリスクには要注意である。前段で指摘したリノベーションを手掛けるNEWITは特にそのハンドリングが注目される。リノベーションで潜在顧客層を広めることは非常に重要かつ効果的なアプローチではあるものの、同時に個別案件へと踏み出すことで、従来型ハウスメーカーのアプローチへ一歩近づくことにもなり得る。もちろん、アールシーコアはそのバランスを崩さないように予め様々な歯止めをかけており、それが特色を希薄化させるものにはならないような仕組みをつくっている。しかし、ターゲットとする市場を拡大させていく過程においては、同様の事態は今後も多く発生してくるはず。NEWITでは、新規に開拓する新たな顧客のニーズへの対応と同社の特色をうまくバランスさせていく手腕が求められるが、その経験はBESSブランドのさらなる強化・拡大への強力な武器になるものと期待されよう。
株式会社エヌ・ジー・アイ・コンサルティング
長井 亨《FA》
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