アールシーコアCORPORATE RESEARCH(14/16):「知る人ぞ知る」ブランドイメージ戦略

2013年6月21日 18:59

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記事提供元:フィスコ


*18:59JST アールシーコアCORPORATE RESEARCH(14/16):「知る人ぞ知る」ブランドイメージ戦略

■経営の特色と展開力

◆特色を支えてきた2つの鍵は・・・

自身で「異端」を標榜する通り、アールシーコア<7837>の特徴は、なんといっても特色溢れる自然派個性住宅のラインナップと既成概念に風穴を開ける斬新な経営手法にある。個性の強い商品を擁している以上、世間一般の多数派の形成は容易ではないものの、感性に訴えることで根強いファン層を開拓。急成長を実現してきた。この背景には、供給する商品に対する創業者のコンセプトが明快であったことに加え、創業者に住宅産業のバックグラウンドが全くなかったこと、そして明解な「ブランド戦略」が大きく影響していると考える。ここにこそ、同社の明確な経営戦略とその展開力をうかがうことができる。


◆・・・一つは明解な「楽しむ」コンセプト

そもそも、創業者のコンセプトは「楽しむ」ということで一貫しており、明解である。「楽しむ」というのは理性ではなく、むしろ感覚的なもの。「相対的優位性」で商品を理性によって訴えるのではなく「絶対的嗜好性」で感覚的に満足してもらう、というスタンスである。一般に市場が飽和してくると、高機能化あるいは低価格化、という形で企業は差別化戦略を図ることが多い。住宅業界も既に新規着工が長期的な漸減基調にある中、多くのハウスメーカーでは機能や細部に拘る動きを加速させる、あるいは低価格指向のパワービルダーが伸長するといった動きが顕在化してきている。アールシーコアは戦略的にこれらの流れとは一線を画し、「好き」になってもらう感性に訴える手法を徹底している。


◆時代の流れが追いついてきた

これは、明らかに時代の流れに沿ったものでもある。「少々の不便は我慢してもとにかく持家を持つことが重要」であった時代は遠い過去のものとなった。現在は利便性や快適性を追求するために、生涯賃貸といった身軽なライフスタイルも既に珍しくない。加えて、バブル以降の地価下落が住宅取得のインセンティブ喪失に拍車をかけている。そういった中、敢えて住宅を取得する層にとっては、多額のお金を投じてもよいと判断できるだけの絶対的な価値判断(つまり、究極的には感覚的に好きか嫌いか)が意思決定の最重要事項になってきている。これはまさに同社の目指しているところ。実際、この時勢においても、同社の販売棟数が長期的な増加トレンドにあることはまさにその証左ともいえよう。

では、なぜ逸早くそういったコンセプトを戦略的に打ち出すことがきたのか。これは、BESS事業の開始当初、ログハウス需要は主として別荘向けであったことが大きいと考える。もちろん、創業者・経営陣が「楽しむ」ことを十二分に意識していたのは当然ながら、別荘向け需要ということで、そもそも「楽しむ」ことを積極的に謳う必要性と必然性があったためである。この経験が現在においてもノウハウの大きな蓄積となっているといえよう。その後、「楽しむ」という消費者の志向が別荘から通常の住宅へとシフトし始める。これに合わせ、同社の領域も別荘から住宅へ、ログハウスからエポックス(非ログハウス)へと拡大してきたと位置づけられる。敢えて大仰な言い方をすれば、時代の流れがアールシーコアに追いついてきた、とすることができるのである。

例えば、同社商品の用途別推移では、BESS事業参入直後の1990年はほとんどが別荘向けてあったのに対し、その割合は徐々に低下。現在はすっかり逆転し、自宅(住居)向けがほとんどという状態となっている。「楽しむ」を求める消費者傾向が別荘から住居にシフトしていることがよくわかる。

◆異端の立ち位置だが、その分、呼応する需要層は絞り込みやすい

一方、最初から住宅を供給してきた他社からすれば、そういった顧客ニーズの変化に合わせて自社の商品ラインナップを随時変えていく必要に迫られることとなる。しかし、多分に概念的、感覚的な「楽しむ」というコンセプトへの舵の切り替えは容易ではない。むしろこれまでの強みを活かす方向へ舵を切り、高機能化や細部にこだわることで顧客のニーズに応える展開を選択する傾向にある。当然ながら、依然としてそれを「良し」とする需要層が圧倒的であるのもまた事実である。ただし、その分、アールシーコアは「楽しむ」というコンセプトに呼応する需要層を絞り込みやすくもなっており、それが高い成約率にもつながっている。個性における差別化がよい回転を産むシステムが確立されてきているといえよう。


◆もう一つは経営陣のバックグラウンド

また、創業者に住宅事業のバックグラウンドがなかったことの影響も大きい。通常、ビジネスの世界において経験のなさは、弱みにはなっても強みにはならない。まして、住宅という「何十年も使用し、かつ非常に高価」な商品において、である。安全信用問題も含め、参入当初は苦戦があったろうことは想像に難くない。


◆消費者視点に徹底できたことで経験の無さを相殺

しかし、バックグラウンドがないからこそ、しがらみや慣行などを排除し、より率直なユーザー視線で業務に取り組むこともできる。先にも触れたが、価格はその典型例。消費者が住宅を購入する際には、どうしても当初見積もりから価格が大きく異なってしまうというケースが多く、しかも消費者は「安全」や「確実な施工・工事」を求めるがゆえに、そういった価格変動に対して強硬には異を唱え難いというのが現実であった。アールシーコアは、業界経験がなかったからこそ、既得権益にこだわらず純粋に消費者目線で見ることが可能となり、顧客への情報開示の観点から企画型モデルでのカタログ販売方式を導入することができたとも言えよう。また、カタログ販売方式以外でも、完成保証制度の導入(共済会方式であるため、アールシーコアと会計は別建て。したがって、アールシーコアの経営状況にかかわらず、保証は確立している)、販社とのフランチャイズ方式など、業界のこれまでの常識からは一線を画したアプローチを展開。経験の無さを、しがらみのない斬新なアイデアと消費者視点で相殺させることに成功している。

ここでも、参入当初は別荘向けが主体であったことが奏功している。ログハウスのような自然派別荘では、求められる機能や建物寿命・機能などに対する期待値が一般の住居とは異なっているため、「楽しさ」次第で新規参入者であっても認められる余地が比較的大きかったものと推定される。ここで実績・経験を得たところで住宅向けにも展開を開始している。おそらく、最初から住宅では相当の苦戦になったのであろうが、別荘向けログハウスの実績がキャッチアップの時間を相当に短縮させたことは間違いないと思われよう。


◆「知る人ぞ知る」という立ち位置にこだわるブランドイメージ戦略も秀逸

そして、より重要な経営展開として「ブランドイメージ戦略」がある。そもそも優れたブランドイメージの構築は、会社の内容や特性を多くの消費者に訴求するには最も効率的であり、競合他社との差別化を端的に図るには最も効果的な手段となる。同社は、全社従業員が200人に満たない所帯ながら、それに特化する事業本部を設置するなど非常に重要視している姿勢がうかがえる。

ただし、同社はTVコマーシャルなどで社名を幅広い層にアピールする方式は採らず、ファッション系などハイセンスな雑誌類を中心に写真などによるイメージ広告を展開。「知る人ぞ知る」という立ち位置にこだわる姿勢を追求し、その切り口に反応する消費者層の発掘に注力している。明らかに「知名度の引き上げ」よりも「ブランド化」に焦点を当てており、その結果として、消費者が「個性住宅BESSのファン」とプライドを持って云える雰囲気の醸成に大きく貢献している。実際、そういったブランドイメージの構築により、BESSの雰囲気を自宅でも再現したいと考えるユーザー層は着実に増加している模様である。

同社の年間広告宣伝費はおよそ4億円。これとは別に地区販社も自身で広告宣伝を手掛けているため、事実上の広告宣伝費はもっと大きな額となる。TVコマーシャルを多用する企業との比較では、決して極端に多額の費用というわけではないが、広告主体にコストのかかるTVコマーシャルが含まれていないことを考えれば、効率的な露出がなされているとも位置づけられる。


株式会社エヌ・ジー・アイ・コンサルティング
長井 亨《FA》

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