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アールシーコアCORPORATE RESEARCH(12/16):焦点は新規来場者数の確保と成約率の引き上げ【1】
*18:57JST アールシーコアCORPORATE RESEARCH(12/16):焦点は新規来場者数の確保と成約率の引き上げ【1】
■KEYWORDS 3 : 中期計画とその進捗
◆焦点は新規来場者数の確保と成約率の引き上げ
ちなみに、受注棟数を新規来場者数で除した成約率は、2011年度が4.6%、2012年度は4.4%。成約率4.5%と現状ほぼ横ばいでも、新規来場者を3.3万組確保できれば、成約棟数は1,480棟が期待できることになる。接客密度上昇で成約率を20%アップの5.4%まで上昇させることができれば、新規来場者3.3万人で期待成約棟数は1,780棟。2011年度の925棟と比較すると、1.9倍の増販が見込まれることになる(単価を横ばいとした場合)。これは、2016年度の目標売上高(2011年度比90%増)とほぼ一致する。つまり、会社側は3.3万組の新規来場数を確保したうえで、その成約率を5.5%程度にまで引き上げる目論見にあると推定できよう(成約棟数目標は1,800棟程度)。とすれば、計画達成の焦点は、(1)3.3万組の新規来場者を確保できるのかどうか、同時に、(2)成約率の引き上げは可能なのか、の2点に絞られることになる。
◆既存拠点での新規来場者目標は既に達成に近づきつつある
まず、3.3万人の新規来場者を確保するためには、1拠点当たりの新規来場者数を2011年度の543組から660組へ20%以上増やす必要がある。これはかなり高いハードルのようにも思えよう。しかし、2012年度時点で既に12%の増加を達成しているうえ、そのうち1拠点は1月下旬開業で実質稼働が2.5ヶ月しかなかったことを勘案すると、既存の展示場ベースでは実質的にはかなり目標に近づいていると考えることができる。歴史的に見ても、2000年代前半は安定的に1拠点当たり600組超の新規来場者を維持しており、2006年度には1拠点当たり年間700組を超える新規来場者を確保したこともある。もちろん油断は禁物ながら、巡航速度を維持できれば、こちらに関しては目標への達成確度は決して低くないと思われる。
◆むしろ新規展示場のパフォーマンスが目標達成のカギ
むしろ、カギとなるのは新規展示場であろう。今後オープンする12の展示場が、短期間で既存のものと同レベルの新規来場者を確保できるのか、が問われることになる。当然、そこまでに至らなければ、既に高いパフォーマンスにある既存展示場はもう一段に来場者を伸ばさなければ目標達成が覚束なくなってしまう。新規展示場がどれだけの加速度を持って既存展示場に迫ることができるかが、3.3万組達成の帰趨を決めることになるはずである。
◆新規出店は全国を実績に応じてブロック化して「エリアマーケティングの付託地域」として対応。広告宣伝効果で新規来場者の確保は射程圏
この懸念に対し、会社側は展示場の出店エリアを戦略的に策定していく方針。全国を一定規模の戸建木造持家着工戸数実績に応じて分割し、その各ブロックを展示場設置の目安にするとしている。実績がある分、住宅購買層が着実に見込まれるその地域を展示場の「エリアマーケティングの付託地域」とし、感性で共感できる顧客層の掘り起こしを進める。会社側は、この方式により全国では潜在的に104カ所の拠点展開が可能としている(中期計画では50拠点が目標)。確かに、展示場という「器」が一定規模の潜在需要が見込まれる地域に設置されるとすれば、得意分野である「感性への訴求」を続けることで、既存展示場並みのパフォーマンスを早晩実現することは決して難しくはないと思われる。また、特に既存店と隣接したテリトリーへの出店も促進している。当初、これは展示場間での顧客の取り合いになるとの懸念も一部にあったが、結果は広告宣伝の相乗効果が大きく寄与。この方式で来場者数を大きく増やしつつある。むしろ問題は時間軸。当然、これを最短化するためには、BESSブランドの全国的な普及に加え、各地域での積極的な広告宣伝・販売促進が必要不可欠となる。ここでどこまで思い切った展開ができるかどうか、最も注目される点となろう。
◆一方、成約率の引き上げは容易ではない
一方、成約率の引き上げは容易ではないと考える。会社側は、営業員の質の向上と営業員一人当たりの新規来場客数絞り込みによる接客密度の引き上げによってその実現を図る計画にある。しかし、歴史的に成約率は概ね4.5%程度での推移となっており、過去最高となった2005年度でも5.3%を超えてはいない。接客密度の上昇はもちろん好影響を及ぼそうが、それが成約率を大きく上昇させるインパクトを持つかどうかの判断は非常に難しいと言わざるを得ないと考える。実際、過去に同様に接客密度が上昇した例は何度かあるが、成約率がそれに伴って(短期間では成約率上昇が確かに認められるものの)趨勢的に上昇したケースはない。接客密度の上昇に加え、もう一段のなんらかの施策が成約率引き上げには必要なのではないか、と思われるのである。
◆むしろ、成約率は構造的に上昇し難くなっている可能性がある
より重要なのは、状況が2005年時点と比較して成約率を引き上げることが困難になってきていることであろう。これは売れ筋が、BESSのファン層が機能や材質にこだわる熱烈なログハウスファンから、ライフスタイルに重点を置く層にシフトしていることに拠る。個性住宅に「関心がある」程度の顧客が一次対象となる分、ひやかし半分の状態から成約まで、ファンになってもらい顧客の関心を熟成させるためには時間もそれなりに要さざるを得ない。また、(別荘取得層とは異なり)住宅の一次取得層はローンの設定や土地の確保など住宅購入の前段階でクリアしなければいけないハードルも多々ある。かつてと比較して明らかにBESSの知名度は上がり、営業ノウハウの蓄積も進んでいるにもかかわらず、成約率に大きな変化が見られないのは、結局のところ、こういった構造的な要因にその理由があるように思われる。そう考えると、接客密度を高めることができたとしても、過去最高の成約率更新というハードルはかなり高いものである可能性が大きい。
◆会社側は営業員数の増加・強化で対応を急ぐが・・・
こういった問題点に対し、会社側は営業員数の増加・強化で対応を急ぐ。2016年度までには、2011年度比で営業員数を倍増させるうえ、販社経営の成功体験を他の販社にも共有させるなど、そのスキルアップを加速させる意向にある。言うまでもなく、営業員の増強は売上拡大に不可欠。成功体験の共有も、全体のレベルアップを短期間で実現するには非常に有効であると考えられる。会社側の対応は極めて合理的であり、「農耕型」を謳う通り、王道にある。
◆・・・ノウハウ蓄積、スキルの獲得には相応の訓練と時間を要しよう
しかしながら、そういったスキルアップ対応を推進しつつも、新規に増員された営業員が押並べてベテランと同程度のパフォーマンスを短期間で実現するとはなかなか考え難い。時間をかけて顧客の関心を熟成させ。最後は成約の背中を押すノウハウのみならず、住宅一次取得層に対しては、金融機関の紹介や地元不動産業者との提携などに丁寧に対応できるだけのスキルの蓄積が欠かせないためである。また、そういったスキルにとどまらず、感性で売っていく以上、営業員自身がその感性にマッチした接客を体現できていなければ、成約率の引き上げは容易ではあるまい。営業ノウハウの蓄積、スキルの体現化には相応の訓練と時間がかかると覚悟すべきであろう。営業員の物理的な増員は比較的短時間に可能だが、これは短期的に平均資質の低下に繋がるリスクも併せ持っている。実際に過去10年を見ても、営業員数が増えるに従い、実は営業員一人当たりの成約棟数は漸減基調を辿っている。
これを受け、同社は営業員個々の突出した能力に頼らなくても良いような「営業システム」の構築で対応を急ぐ。時間はかかるかもしれないが、常に顧客の視点に立つ営業システムを徹底することで全体のボトムアップを図り、成約棟数効率を引き上げる方針にある。ただし、これは大きなリスクも内在している。採用の中心は「型に嵌まっていない」人材となる一方、これまで業績を牽引してきた優秀な営業員はシステムで縛られる状態を窮屈に感じるだろうから、である。このバランスの舵取りは極めて重要であろう。中期計画策定から1年が経過した時点で、現実の営業員増加ピッチは12%弱とやや物足りない点も、「型に嵌まっていない」営業員を増やすことの難しさをうかがわせている(2016年に営業員がフル稼働するためには、年20~30%のペースで増員を図っておく必要がある)。経営計画は5か年の比較的長いスパンで策定されているために真価が問われるのはこれからだが、消費者と直接対峙する地区販社が成約率引き上げへのハードルを如何にクリアできるかが(あるいは、新規来場者数を3.3万組より引き上げ、このハードルを如何に低くさせるかが)、中期計画達成の決め手になるはずである。
株式会社エヌ・ジー・アイ・コンサルティング
長井 亨《FA》
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