【話題】米国の量的緩和終了とマーケットへの影響

2013年6月2日 15:40

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■「出口」戦略は年初から度々、浮上、今度は可能性強まる、7日の雇用統計が注目

 前週末5月31日の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均株価が前日比208ドル96セント下落した。同日発表の米主要経済指標が強い内容だったため、米FRB(連邦準備制度理事会)の量的緩和縮小または終了の時期が早まるとの観測、いわゆる出口戦略観測が一段と強まったようだ。

 31日に発表された米主要経済指標のうち、4月個人所得・個人消費支出は前月に比べてやや低下して市場予想も下回ったが、5月シカゴ購買部協会景気指数は58.7で前月の49.0に比べて大幅に改善し、市場予想の50.0も大幅に上回った。5月ミシガン大学消費者態度指数確定値は84.5で、速報値の83.7から上方修正された。

 ダウ工業株30種平均株価の動きを見ると、5月3日の取引時間中に史上初めて1万5000ドル台に乗せ、さらに終値ベースでは5月7日から5月31日まで18営業日連続で1万5000ドル台を維持している。ただし取引時間中の高値は5月22日の1万5542ドル40セントで、その後はやや上値が重くなり高値圏モミ合いの状況だ。これは量的緩和の出口戦略が強く意識されているためだろう。

 出口戦略観測は今年初から度々指摘されている。そして主要経済指標が強い内容であれば出口戦略が意識され、弱い内容であれば量的緩和継続との思惑を繰り返しながら、企業業績の改善を好感して水準を切り上げ、ダウ工業株30種平均株価は史上最高値を更新した。

 市場が注目する米FRBは、失業率6.5%に改善するまで量的緩和を継続するとしている。ただし、バーナンキ米FRB議長は5月22日の議会証言で「当面は量的緩和を継続する」としながらも、同時に「景気や労働市場の改善が続き、それが持続するとの自信があるなら、今後数回のFOMC(連邦公開市場委員会)会合で資産購入の減額を行う可能性がある」と述べた。この発言を受けて市場では出口戦略観測を一段と強めている。

 したがって、6月7日発表の米5月雇用統計で雇用情勢の改善が確認されれば、次回6月19日~20日の米FOMCで量的緩和縮小または終了が協議されるとして、出口戦略観測が強く意識されそうだ。株式市場では雇用改善を景気回復として好感する買いが優勢になるのか、量的緩和終了すなわち金融相場終了として売りが優勢になるのかが注目されるだろう。

■「シェールガス」武器に米国経済には自信も

 ただし量的緩和縮小または終了は、米景気回復に対する米FRBの自信の証でもある。長期金利上昇の影響や財政問題などに不透明感があるにしても、一方では「シェール革命」も後押しして「強い米国」復活に向けた期待が高まるだろう。株式市場は金融相場から業績相場へ移行することになる。目先的に調整しても自律調整の範囲にとどまり、トレンド転換には至らないだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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