日経平均株価暴落の真相/Miniトピック

2013年5月27日 10:06

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記事提供元:フィスコ

 先週23日に日経平均株価は歴代11位となる前日比-1143円安の大暴落を記録した。暴落の理由には前夜バーナンキFRB議長が量的緩和の縮小を示唆したことが背景にある。しかし、バーナンキ議長は質疑応答の中で、「労働市場が持続的に改善すれば」「段階的に資産買い入れペースを縮小する」「可能性がある」というこれまでの見解を繰り返したにすぎない。「労働市場が持続的に改善すれば」という仮定付きの話でもある。これにより確かに米国株式市場も下落に転じたが、その後の米国株式市場の下げ幅は限定的だ。

 では、なぜ日本の株式市場はかくも大きな暴落となったのか。暴落のきっかけとなったのは中国のPMI指数との指摘もあるが、同指数は予想より悪かったとはいえ、景況の悪化の節目である50を僅かに割ったにすぎない。

 より重要なのは日銀の国債買いオペだった。23日の日銀の買いオペは短期中心であったため、日銀の長期金利を抑制する姿勢の本気度に疑問が生じた。長期金利が1%に迫っているにもかかわらず、上昇を抑えこむ日銀の断固とした姿勢が感じられなかったのである。このような日銀の姿勢を感じ取ったヘッジファンドなどが利益確定に動いたというのが真相だろう。全体としては度を超えた過剰反応という結果となってしまった。

 そして、最近日本市場で上昇著しかったのは「日経平均」と日経平均への寄与度が高い一部の銘柄、そして日経平均先物だった。日経平均への寄与度が高い一部の銘柄や日経平均先物はスルスルと上がって行くが、その他の個別株の上昇はさっぱりで首を傾げる市場関係者も多かったが、最近の急上昇から急降下の動きは「日経平均」を上昇させたい短期筋が短期間に一気に買い上げ、そして上記をひとつの機会として売りに転じたという可能性が高い。23日はその動きが急で大きかったことからその他の大口のアルゴリズム取引が反応、さらに個人の損切りを巻き込んで下げが下げを呼ぶ展開になったと推察される。

 最近、日経平均は一部で「ファナクロ指数」と呼ばれている。上昇局面におけるファナックやユニクロ(ファーストリテイリング)、京セラなどの寄与度が極めて高かったのである。日経平均の上昇の半分以上はこれらの銘柄によるものでした、という例も度々見られた。

 日経平均を吊り上げたい向きは、先物とこれらの特定銘柄を集中して買えば簡単に吊り上げられるということになる。日本株式市場全体を示す代表的な指数として扱われているのに、このような構造にあることはやや問題だ。現に「日経平均」が暴落したことにより、ニュースで大きく報道され日本全体が大騒ぎになった。

 しかし、よく目をこらしてみると個別株はそうでもなかったり、逆にしっかり買われているものもある。

 アベノミクスは成長戦略の策定と参議院選挙後の実行が控えており、これからが本番だ。その成否はまだなんとも言えないが、上記のような構造を理解すれば、「日経平均」に売り仕掛けのような動きがあり全体がそれにつられて動いた場合は、大きなバーゲンハンティングのチャンスが隠れているかもしれない。

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