直近IPO15銘柄から急落相場リバウンドをリードする「お助けマン銘柄」の候補株が浮上も=浅妻昭治

2013年5月27日 08:49

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

 「戦力の逐次投入はしない」と大見得を切ったのは、日銀総裁に就任したあとの4月4日の初の金融政策決定会合後の記者会見の席上であった。黒田東彦日銀総裁である。「戦力全力投入」の「異次元の金融緩和策」は、「アベノミクス」効果にこの「クロダミクス」効果が上乗せとなって、為替相場は、1ドル=93円台から103円台まで円安となり、日経平均株価は、1万2634円から1万5942円まで26%高し、一時は、円とドルでは通貨単位は異なるが、絶対数値でNYダウを上回った。

 ところがである。株高、「リスクオン」の行き過ぎか、米国の金融政策の変更観測の強まりの影響か、長期金利が上昇に転じた。これに対して5月23日の金融政策決定後の記者会見後のその黒田総裁の発言が、4月の会見とは差が出ていまひとつ歯切れが悪い。具体的な対応策への言及が乏しかった。大見得を切った手前、次の一手の用意があるとは言い難いのか、それとも本当に全戦力を出し切って「玉切れ」となっているのか、よく分からない紋切り型の会見に終始したのである。

 この結果、5月23日に日経225先物取引にサーキットブレーカー(取引の一時停止)が発動されるほど混乱し、この余波で現物株の日経平均株価も、1143円安と暴落し13年ぶりの大幅な下落幅を記録してしまった。マーケットでは、早くもこの黒田日銀への風当たりは強まり、前週末24日に日経平均株価は、寄り付きに523円高と反発して1万5000円台を回復したものの、一時は、1万4000円台を割り、大引けでは、128円高にとどまり、為替相場も、一時、1ドル=100円台と円高がぶり返した。日中の日経平均の振れ幅は、2日連続で1000円超幅とジェットコースター並みの大荒れとなった。

 問題は、この先である。今回の株価急落が、早くも野党各党が政治問題化した「アベノミクス」バブルの破綻なのか、それとも政府当事者がマーケットコメントしたようにピッチの早すぎた株価上昇のスピード調整にしかすぎないのかということである。市場も、この政治家の甲論乙駁・相場観測任せではなく、また黒田総裁を株安の「A級戦犯」に仕立てて名指しで批判するだけでなく、この先の相場推移を自ら判断しなくてはならない。

 相場格言でも、「株価は株価に聞け」といわれている。いたずらに警戒感を強め、疑心暗鬼に陥るよりも、具体的に個々の銘柄の一挙手一投足によって、相場の方向性を示唆する音が「コツン」と聞こえるか、聞き耳を立てる投資セオリーを教えている。今後の相場展開として、なお下値を探る調整相場が続くのか、値幅調整を終わって日柄調整局面に移行するのか、それとも悪材料織り込み済みとしてリバウンド相場が期待できるのか、確認する必要があるわけだ。

 今週は、これを試す相場展開が続くはずである。もっとも手っ取り早い確認材料となるのが、急落時に傷を負った投資家を救済する銘柄、「お助けマン銘柄」の株価動向である。相場急落直後は、高値でハシゴを外された投資家が、保有株を見切売りして値動きのより軽い銘柄に乗り換えるか、「ピンチはチャンス」とみた投資家が、果敢に逆張りに挑戦するかなどで、逆行高する銘柄が、必ず出てくるものだが、この「お助け銘柄」の逆行高の信頼性と持続性により、相場全般の方向性と市場マネーのフトコロの深さを探るのである。

 「お助けマン銘柄」の候補株は、この急落時に実際の逆行高した銘柄か、下げた銘柄ほど良く戻るとする「リターン・リバーサル」狙いの銘柄のいずれかに分かれるはずである。そこでである。この逆行高銘柄の一番候補として注目したいのが、直近IPO(新規株式公開)株である。乱高下相場が続いた24日に、直近IPO株にストップ高銘柄が、続出したからである。

 24日に全市場でストップ高した銘柄は、21銘柄に達したが、このうち3銘柄が、直近IPO株で占められていた。今年3月13日にIPOのオイシックス <3182> (東マ)、3月14日公開のオルトプラス <3672> (東マ)、4月25日上場のオークファン <3674> (東マ)である。このオークファンの上場以来中断していたIPOも、6月11日予定のペプチドリーム <4587> (東マ)の新規上場から再開される。この再開とともに、上値のシコリがなく値動きも軽いとのセールストークでIPO株投資が盛り上がるとすれば、直近IPO株への見直しも働き、「お助けマン銘柄」のミッションを十分に果たしてくれることになる。オークフアンまで15銘柄上場された直近IPO株のうち、どの銘柄に照準を絞るかリサーチとアタックは怠れないことになる。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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