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日米同盟 信頼関係は完全復活といえるのか
「日米同盟の信頼関係は完全に復活した」。安倍晋三総理は日米首脳会談後の記者会見で宣言した。[写真拡大]
「日米同盟の信頼関係は完全に復活した」。安倍晋三総理は日米首脳会談後の記者会見で宣言した。
安倍総理は首脳会談で、オバマ大統領に「集団的自衛権の見直し」を検討していることを伝えるとともに、「普天間飛行場の移設計画も早期に進めていくことで一致した」とした。
あわせてTPPについては「聖域なき関税撤廃が前提ではないことが確認された」として、「まず、日米主脳会談の結果を自民党、公明党に報告する。そのうえで、TPP交渉に参加するかどうかについて、これは政府の専権事項として政府に対して一任を頂くことをお願いしていきたい」と自公から一任を取り付けたうえで「政府の専権事項として、早期に判断していく」考えを示した。
日米の信頼関係は本当に完全復活したのだろうか。完全復活への前提条件を提示し、これにオバマ大統領が納得したに過ぎないのではないか。
安倍総理が提示したのは結果的にオバマ大統領が歓迎する案件ばかり。一方で、こうした案件(信頼関係完全復活の条件)が停滞した場合、オバマ大統領が期待するところの安倍総理のリーダーシップに対する落胆は大きいだろうし、日本政府への信頼は低下することになる。まさに、オバマ大統領が「強いリーダーシップを期待している」と安倍総理に語った意味の深さがみえる。
TPP、普天間移設、集団的自衛権の解釈の見直し、いずれをとってもハードルが高い。
TPPは食料安全保障の問題をはじめ、日本の農業を国際競争の中でどう成長させていくのか、関税撤廃の例外を闇雲に増やすことはできないだろうし、TPPの目的に反することになる。
仮にTPPが聖域なき撤廃を前提にするものでなかったにせよ、TPPに参加することによる影響について、これまでに政府が得た情報や分析結果について政府はほとんど国民に開示していない。
国民皆保険制度をはじめISD(投資家対国家間の紛争解決)条項など懸念される項目については政府が自公から一任を取り付けた場合でも、国民に対して政府判断をする前に、明確な姿勢を表明してからにすべきだろう。
社民党は日米首脳会談前に、総理に対して「これまで日本が諸外国との通商交渉で確保してきた関税撤廃の例外品目(約940、うち農林水産品約850)は最重要であり、少なくともコメ、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目を例外・再協議扱いするよう求めた2006年12月の衆参両院の農林水産委員会における、日豪EPAに関する全会一致の決議の内容を譲ることがあってはならない」と求めた。与党の自民党内にも思いを同じくする議員は多い。自公の一任を取り付けられるのか、第一の関門がそこにある。
また、安倍総理は「日本経済再生を成し遂げることが安倍内閣の最優先課題だが、3本の矢について説明し、歓迎して頂いた」とも語った。あわせて、オバマ大統領からは「強いリーダーシップを期待しているとの話があり、日本経済の再生は日米両国、さらには世界にとって有意義であるとの認識を共有した」とも語った。
米軍再編について、安倍総理は「普天間飛行場の移設、および嘉手納以南の土地の返還計画を早期に進めていくことで一致をした」と語った。しかし、政府は沖縄との信頼関係改善に対して動き始めたばかりで、閣僚が沖縄に足を運び、沖縄の意向を真摯に聞き、意思疎通を図っている段階ではないのか。急速に沖縄の姿勢が辺野古への代替施設建設に動くとは思えない。
集団的自衛権の行使に関する政府見解も、与党の公明党・山口那津男代表はこれまでの政府見解を妥当としており、見直しには相当慎重な検討を要するとしている。いずれも時間をかけた審議が必要で、結論の先送りを期待するものではないが、安倍総理がオバマ大統領に提示したこの3案件については慎重な国会審議を期待したい。(編集担当:森高龍二)
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