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「AO入試」にみる私立・国公立大学それぞれの思惑
今や7割 の大学が実施する「アドミッション・オフィス入試(AO入試)」が曲がり角を迎えている。文部科学省が発表した2012年度のデータでは、私立大学のAO入試による入学者数が2年連続で減少、頭打ち傾向となった 。日本では1990年に慶応大学が初めて導入し拡大してきたAO入試だが、開始から20年以上を経て見直しの時期に来ているようだ。
ベネッセの調査によると、推薦・AO入学者の約半数は高校3年時の学習時間が「1日1時間未満」であり、「受験対策をしなかった」学生も5人に1人にのぼることが分かった 。偏差値が低いほど「学習時間が1時間未満」の比率が高まっており、推薦・AO入試によって高校生の学習意欲が下がっている可能性もある。定員割れに悩む私立大学が学生を集めようと、AO入試を活用してきた経緯もある。
とはいえ同調査では、推薦・AO入学者の中で受験対策において「あきらめずに努力し続けた」学生の大学への満足度は、一般入試での同様の入学者より高いことも明らかになった。AO入試は多面的な選抜が行われるため、受験対策期間が長くなる。そのために地道に努力を積み重ねた学生ほど、入学後も満足度や意欲が高くなるのだろう。
要はAO入試の利用者も「意欲をもって主体的に学習した層」と「学力不足のためにAO入試などを利用した層」とに二極化しているということだ。
グローバル化の中で、企業や社会が求める人材の質はマニュアル型から「自ら主体的に行動できる人材」へと変わってきている。今年1月には京都大学の総長が「(大学の役割は「教え込む」ことではなく、学生が)自分で気づき成長しようとするのを引き出す」ことであるとして、偏差値に依拠した受験勉強ばかりでなく「例えば音楽とか、恋愛始め人間関係の葛藤とか、幅広い経験をしてきた人に入試のバリアを少し下げる」と発言して話題になった。私立大学では減少しつつあるAO入試が、国公立大学では微増となっている背景には大学側のこうした考えがあるのかもしれない。
「学力による選抜」と「多様な人材を輩出するための教育」をどう両立させるのか、各大学は重要な判断を迫られている。
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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