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【主要企業決算】いつまでもあると思うなアベノミクス
アベノミクスの「3本の矢」の1本目の財政出動(公共投資)で建設や不動産、2本目の金融緩和で金融が潤うと言われるが、第二次安倍内閣が本格的に始動したのは1月からなので、昨年の4~12月期決算はまだ「期待先行」の段階[写真拡大]
アベノミクスの「3本の矢」の1本目の財政出動(公共投資)で建設や不動産、2本目の金融緩和で金融が潤うと言われるが、第二次安倍内閣が本格的に始動したのは1月からなので、昨年の4~12月期決算はまだ「期待先行」の段階。それでも採算性が低いとはいえ震災復興需要がロングランで続いた上に、中央道笹子トンネル事故を受けて緊急点検と対策工事が入り、建設需要は引き続き底堅かった。金融機関も株高で資産評価にプラスの影響も出ていた。
地方銀行首位の横浜銀行<8332>は、経常収益は0.4%増の2188億円、経常利益は9.7%増の734億円、純利益は22.3%増の426億円。株高で株式等関係の損益が改善し、与信コスト減も含めて利益増に貢献した。12月末の国際統一基準の連結自己資本比率は9月末から0.16ポイント改善して14.53%(Tier1比率は12.13%)。通期業績見通し、年間配当見通しは据え置いた。
建設の大成建設<1801>は、売上高は5.9%増の9249億円、営業利益は37.4%増の306億円、純利益は137億円(前年同期は61億円の赤字)。手持ち工事が多く、前年同期に約120億円の評価損を計上した反動で大幅増益になったが、震災後の労務費上昇の影響が出ている。増収増益の通期業績見通し、年間配当見通しは据え置いた。
清水建設<1803>は、売上高は6.6%増の9501億円、営業利益は49.7%減の65億円、純利益は64.5%増の48億円。前年同期に大型ビルの売却益を計上した反動や工事採算の悪化で経常減益でも、前年同期に法人税減税で繰り延べ税金資産を取り崩した反動で最終増益。増収増益の通期業績見通し、年間配当見通しは据え置いた。
鹿島<1812>は、売上高は1.2%増の1兆302億円、営業利益は15.1%増の243億円、純利益は5倍強の168億円。受注減でも官公需が伸びており、採算性のよい建築工事が完成して利益に貢献。前年同期に繰り延べ税金資産を取り崩した反動が純利益を大きく押し上げた。減収増益の通期業績見通し、年間配当見通しは据え置いた。
住宅関連の大和ハウス<1925>は、売上高は7.8%増の1兆4259億円、営業利益は1.9%増の887億円、純利益は61.9%増の514億円。戸建ては前期並みだが、環境配慮型住宅、防犯配慮型の女性向け賃貸住宅、都市圏のマンション販売が好調で、管理事業も伸びた。中国事業も反日デモによる大きな影響はなかった。増収増益の通期業績見通し、5円増配の年間配当見通しは据え置いた。
建設資材の太平洋セメント<5233>は、売上高は2.2%増の5514億円、営業利益は28.4%増の240億円、純利益は約6.5倍の71億円。震災復興需要で道路用セメント、生コン骨材の販売が好調で、港湾工事用の盛り土の販売も伸びた。重油価格の上昇を石炭価格の下落で相殺。震災がれきや火力発電所の石炭灰を処理するリサイクル事業も利益の大幅増に貢献した。増収増益の通期業績見通し、年間配当見通しは据え置いた。
不動産の三井不動産<8801>は、売上高は前年同期比6%増の9448億円、営業利益は26%増の977億円、純利益は69%増の469億円。低金利などを背景に住宅取得ニーズが高まり、新築マンション引き渡し戸数は東京都内を中心に震災の影響があった前年同期の約3割増。地価が安い時期に土地を手当てしたので採算も良いという。賃貸事業の大型商業施設の開業効果も利益大幅増に貢献した。駐車場運営も好調で、中古マンションの売買仲介件数は過去最高。増収増益の通期業績見通し、年間配当見通しは据え置いた。
三菱地所<8802>は、営業収益は2.5%減の6549億円、営業利益は15.5%減の876億円、純利益は34.6%減の339億円。マンション引き渡し戸数は増加したが、前年同期の大型ビル売却益の反動、ビル建て替えに伴う特別損失が純利益を押し下げた。減収減益の通期業績見通し、年間配当見通しは据え置いた。
住友不動産<8830>は、売上高は2%増の5087億円、営業利益は3%増の1112億円、純利益は30%増の503億円。賃貸事業は東京・新宿の大型オフィスビルの通期稼働、既存ビルの空室率低下が収益に貢献し、不動産販売事業のマンション販売事業は引き渡し戸数は減少しても利益率は上がった。支払利息の軽減や投資有価証券評価損の減少も純利益増に貢献している。増収増益の通期業績見通し、年間配当見通しは据え置いた。
来年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられると、その影響が最も大きく、増税前の駆け込み需要が最も大きく、最も早く始まるのは新築住宅だと言われている。たとえば建物部分が3000万円のマンションなら消費税は150万円から90万円増えて240万円になり、新入社員の初任給1年分が税金として巻き上げられる。ただし、完成・引き渡しが来年4月以後であっても今年9月30日までに購入契約を完了すれば消費税は5%のままでよい。10月1日以後に契約すると8%になる。逆算すると駆け込み需要はそろそろ始まる頃で、この春から夏にかけて盛り上がってくるだろう。消費税が10%に上がる2015年10月以降完成のマンションまで今年の駆け込み販売合戦に加わってきたら、それだけ仮需が盛り上がり、マンションの建設需要は長く続くことになる。つまり建設業界には、アベノミクス以前の民主党・野田内閣の消費増税まで、プラスに効いてくるのだ。そこに住宅ローン減税の拡大や相続税関係の生前贈与の制度改正や住宅取得補助金などが加われば、政策効果はさらに高まる。
そのように金融、建設、不動産の各業界は、業績が政府の政策に大きく左右されがち。だからこそ「アベノミクス型」と呼ぶのだが、問題はアベノミクスが終了したその先だ。公共投資が絞られたり、住宅ローン減税が打ち切られたり、金利が上昇し始めたら、たちまち失速してしまうようでは心もとない。
日本経済全体が力強く自律回復することも必要だが、子どもが経済的に自立すれば親のカネに頼らなくても生きていけるように、アベノミクス型の企業も、政府の政策にぶら下がらなくてもやっていけるような持続性のあるビジネスモデルや堅実な財務内容を確立しならなければならない。「いつまでもあると思うな親とカネ」ならぬ、「いつまでもあると思うなアベノミクス」だ。(編集担当:寺尾淳)
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