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十大新製品賞にみる、モノづくり産業を牽引する注目製品
優秀新製品の開発奨励と日本の技術水準向上に資することを目的として1958年に創設された「十大新製品賞」。毎年、その年に製品化され、発売された新製品の中から10点を厳選し表彰する制度であるが、今年も応募総数65社68点の中から、本賞10点、日本力(にっぽんぶらんど)賞4点、モノづくり賞4点が選定され、主宰である日刊工業新聞から発表された。
受賞製品には、シャープ<6753>の酸化物半導体(IGZO)を採用した液晶パネルや、スマートフォンなどで家電を制御・管理するパナソニック<6752>のスマート家電など、直接一般ユーザーが手に取って実感でき、すでに注目を集めている製品がラインナップしている。一方、一般ユーザーが直接商品として手にすることが少ないものの、モノづくり産業の発展、そして、結果的に我々の生活を豊かにするような注目すべき製品も多く受賞している。
例えば、本賞を受賞したものの一つに、アイダエンジニアリング<6118>のサーボトランスファープレスシステムがある。現在、自動車分野での車体軽量化・強度向上ニーズに対し、高張力鋼板のプレス加工使用が増えている。しかしその性質から、成形の難易度が増し、不良が起こりやすく生産性を落とす要因となっている。これに対処すべく同社では、プレス機1台で多工程の加工ができるサーボモーター駆動の大型トランスファープレスシステムを開発。振り子運転と呼ばれるプレスの複雑な動きに合わせて、製品を次工程に送る搬送装置を同期化させることに世界で初めて成功し、難加工材の成形や複雑な形状の加工でも高い製品精度を維持しつつ、最大限の生産性も実現している。
また、同じく本賞を受賞したローム<6963>のフルSiCパワーモジュールは、スイッチング損失を85%も低減し、産業機器や太陽光発電装置などの電力損失を大幅に削減する製品である。一般的に電力は、発電されてから消費に至るまでに多くの電力変換が必要で、その都度、数%程度の電力損失が発生している。日本国内の年間総発電量は1兆kWhだというから、わずか1%の電力損失でも100億kWhのロスが発生していることになる。このロスを低減させる手段として、従来のSi(シリコン)よりも電力変換時の損失が少なく材料物性に優れたSiC(シリコンカーバイド)に注目が集まっている。Si半導体を全てSiCに置き換えた場合の省エネ効果は、日本国内だけで原発4基分にも上るとの試算もあるほどだ。本賞を受賞したフルSiCパワーモジュールは、ロームが世界で初めて量産を開始し、こうした低電力損失を実現する製品である。
さらに、本賞を受賞した製品は、形のある製品ばかりではない。富士通<6702>の新製品であるものづくり革新隊は、日本のものづくりの全領域を総合的に支援するサービスである。日本のモノづくりを強化するために同社グループのノウハウやツール、人材を集結した本サービスでは、ものづくり業務の運営や運用オペレーション、ものづくり業務のプロセス改革や運用方法の刷新、開発や生産の効率化・連携強化などをトータルでサポート。「ものを作らないものづくり」がコンセプトとなっており、バーチャルに製品・工場を再現し、開発期間の短縮や量産での高品質を実現するものとなっている。
これらは一般ユーザーの目にはとまりにくい製品かもしれないが、世界に誇れる自国の技術である。こうした製品にもっと焦点を当てることで、景気回復への原動力の一端となるのではないだろうか。
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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