円安を巡る思惑展開へ=犬丸正寛の相場展望

2013年1月18日 16:30

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

【犬丸正寛の相場展望】

■円安は産業界歓迎でも生活者に圧迫、選挙控え舵取り微妙

  来週(1月21日~25日)は、『円安に対する功罪相場の展開』が予想される。1ドル・90円台に進んでいる円安。産業界にとっては悪い話ではないものの、生活者には圧迫となる。選挙を控えているだけに、政府としても産業界だけに目を向けているわけにはいかないだろう。

  早くも、ガソリン価格が大きく上昇に転じ、輸入食品にも価格上昇の圧力がかかっている。LNGなどエネルギー源もアップとなり電力料金等を通じ生活者を圧迫する。天候不順も加わって野菜も値上りしている。主婦の間から悲鳴が上がり始めている。長く、デフレに馴染んできただけに急激な物価高は受け入れ難い心理がある。

  本来、インフレ政策を掲げているわけだから、物価上昇は好ましいはず。しかし、問題は生活者への負担が先行することだ。円安で輸出競争力が向上する企業にとっては願ってもないことながら、潤った企業が直ちに雇用を増やし賃金アップを行うわけではない。先行きの見通しにそうとうの確信が持てないと企業は設備を増やしたり雇用を増やしたりはしない。しかし、円安による生活物資の値上りは待ったなしである。この点が急激な円安は好ましくないということとなる。

  今年、選挙がないなら産業界優先先行で1ドル・100円のような円安も歓迎だろう。しかし、それでは産業界の票は獲得できても、消費者物価高のままだと夏の参議院選挙では個人の生活者票は逃げてしまう心配がある。国会が始まれば、当然、野党側の円安批判も予想される。

  このため、政府筋から円安を牽制するような発言が今後も出ることが予想される。当然、それに連れて輸出関連銘柄は高値圏で波乱をみせることとなるだろう。

  雇用を即効性で改善するには、やはり公共投資の増加だろう。とくに、東日本の地域再生に一気にアクセルを踏み込むところだろう。

  日経平均は、仮に、1ドル・100円まで許容するというコンセンサスなら1万2000円近くもあるだろう。逆に、1ドル・90円程度で落ち着かせるということなら現在水準でのモミ合いだろう。ここは、政府筋の発言に注意しておくことが肝要だ。

  移動平均線乖離率などテクニカル面でも相場は高値警戒が必要なところにある。このため、しばらくは、指数よりも個別銘柄での物色が活発となりそうだ。東日本復興関連の公共投資関連銘柄や対中関係に修復の兆しも見れるため中国関連銘柄にも目を向けておきたい。(執筆者:犬丸正寛 株式評論家・日本インタビュ新聞社代表)

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