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■評価者を誰にするのか
評価制度では、「何を評価するのか」という評価項目とともに、「誰が誰を評価するのか」という評価者と被評価者の関係は重要なところです。一次評価、二次評価という形で評価者を複数にしたり、部下評価や360度評価など、上司からの一方的な評価にならないような配慮をした制度もあります。
それぞれのやり方には一長一短がありますので、自社の状況に合わせて検討して頂きたいと思いますが、私が経験してきた中では以下のような事例がありますので、参考にして頂ければと思います。
○一次、二次など評価回数を多くしても、一次評価の結果は重い。
評価者個人による評価の偏りを防ぎ、全体を見た上での調整を行うために、一次評価、二次評価という形で何段階かの評価を行う制度にする場合は多いと思います。
ただ実際の運用の中では、比較的現場に近い一次評価者が行った評価、本人と直接面談しながら行ったような一次評価の結果を、本人と直接接触する機会が少ない二次評価以降の評価者が大きく調整するというのは実際には非常に行いづらく、一次評価の結果が重くなることが多いと思います。
評価制度をうまく運用するには、結局は一次評価者の評価スキルが非常に重要だということは理解しておく必要があるでしょう。
また、評価調整というのは、どちらかというと突出した評価を抑えて差を縮める方向になりがちなので、やればやるほど中心化傾向を助長してしまいがちであることと、もしも大きく調整を行うとすると、今度は本人への評価結果のフィードバック難しくなるという面を理解しておく必要があります。
フィードバックなどはあえて積極的には行わないという会社もありますが、本人の納得性や今後の育成などを考えると、何が良くて何が足りなかったかというフィードバックはしっかり行うべきで、そのための運用方法はしっかり考えておく必要があるでしょう。
○部下評価や360度評価などは、必ずしも公正な評価にはつながらないことがある。
上司からの評価だけでなく、いろいろな立場の人から評価されることを通じて一方的な評価や不公正な評価を防ごうということで、部下からの評価や360度評価を導入することがあります。運用次第では十分に意義がある仕組みではありますが、この際に注意すべきなのは、評価者が若手や一般社員ということで、人を評価することに慣れていない場合が多くなるということです。
特に部下が上司を評価するというのは、感情や人間関係に左右されたり、ある視点に偏ったりしがちです。また一方的に攻撃したり、逆にその後の関係維持のために遠慮していたりということが起こる懸念もあり、実施する上ではそれなりの環境作りも必要になってきます。評価結果のウエイトが大きい場合などは、逆に不公正を助長しかねないケースもあります。
私がこのような仕組みを導入する際は、評価結果をどこかに反映するというよりは、双方のコミュニケーション材料として使う目的で実施することがほとんどです。
導入するにあたっては、「一方的な評価や不公正な評価を防ぐ」という目的に合致するように、活用方法には十分留意するようにして下さい。
○被評価者(部下・メンバー)が少ない評価者(リーダー・マネージャー)は評価が偏りやすい。
特に一次評価者は、少人数グループや少人数プロジェクトのリーダーが評価者になることがありますが、この場合どうしても評価の偏りが大きくなる傾向があります。評価するにあたって比較対象が少ない中で評価しなければならないという点と、評価者であるリーダーと被評価者であるメンバーの関係が近いので、お互いを理解しているがゆえに厳しい評価がしづらい、逆に知っているがゆえに厳しくなるという両面があります。
これは制度上でどうこうするというよりは、事前に評価の観点合わせをする、他の評価者とともに評価を行うなど、運用上の配慮をすることが必要であろうと思います。
次回も引き続き、評価制度を検討する上での留意事項をご説明していこうと思います。
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