深井晃子、藤本壮介、長谷川祐子が語る「Future Beauty 日本ファッションの未来性」

2012年8月3日 10:15

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記事提供元:ファッションプレス


2012年10月8日(月・祝)まで東京都現代美術館で開催されている、「日本ファッション」の30年間の流れをたどる初の大規模な展覧会、「Future Beauty 日本ファッションの未来性」。開催に先駆け記者会見が行われ、ディレクションを手がけた、京都服飾文化研究財団(KCI)チーフ・キュレーターの深井晃子、本展の展示デザインを手がけた建築家の藤本壮介、東京都現代美術館チーフ・キュレーターの長谷川祐子が本展の魅力について語った。


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■深井晃子

日本ファッションは1970年代に三宅一生、そして80年代には川久保玲(コム デ ギャルソン)、山本耀司というの世界に誇る日本ファッションの巨匠たちを輩出しました。そして現在、そんな80年代に生まれた若いデザイナーたちが活躍を開始しています。日本ファッションのDNAを引き継ぐ彼らによって、日本のファッションはどんなふうな時代へ向かうのかを問いかける展覧会となっています。



本展では、三宅一生、川久保玲、山本耀司らの、今ではまぼろしとも言われている初期の作品と、若いデザイナーたちの作品を一堂に集めた、国内でも海外でも初の大規模な展覧会となります。2年前にロンドン、昨年ミュンヘンでも開催され成功を収めましたが、今回は新たに注目され始めた15ブランドのデザイナーたちの作品が加わり、さらにバージョンアップされました。



今、メディアが激変しています。購買形態が変容しています。デザイナーたちが、ファッションシステムへ疑問を持ち始めています。彼らを取り囲む難しい問題が山のようにある中で、それに対して若い人たちがどのように答えを出していくのか、本展を通して考えていきたいと思います。



KCIは、1978年、ファッション研究に特化する財団として、日本ファッションがこれからアイデンティティを持とうとしていたときに誕生しました。ファッションの文化的側面をバックアップし、それを補強していくことによって日本ファッションの地位を世界で築いていくために、展覧会などを行ってきました。



日本ファッショの全貌を初めて解き明かす本展が、日本ファッションの問題について考えるきっかけになればと思っています。そして、日本ファッションの未来性について議論を呼び起こしたいと思います。



■藤本壮介

ロンドン・ミュンヘンに続き、今回東京でも展示デザインを担当しました。主役はファッションですので、会場デザインにあたっても、観る人が服を一番いい形で観れるようにと考えましたが、ファッションの展示には独特の難しさがあると感じています。



展示物である服は、大きさが人間のサイズくらいで、ほぼ同じような大きさのものが続きます。その中で抑揚や変化をつけながら、前後の関係を考えつつ、大きな流れをつくりながら展示デザインすることが必要になります。それに、作品自体は大きくありませんが、ファッションが持っていいるオーラというのはとても大きいものです。そのオーラを展示室の大きさまでひきのばす感じが、ファッションの展示のおもしろさだと思います。



さらに、着ている服も、展示されている服も、言ってみればほぼ(両方着用できるという点で)同じ位置づけであり、でも一方で全く次元が違うものでもあります。そんな近しいようで遠いものである存在を、うまく体験できるように展示デザインしました。



具体的には、例えばセクション1「陰翳礼讃」の部屋では、薄い半透明のファブリックで空間を仕切り、その向こう側にかすかに次の展示が見られるようになっています。今見ているものに集中しながら次のものに対する予感がかきたてられます。このセクションには、本展でも一番貴重な作品が展示されていますので、その崇高さや厳かな雰囲気を伝えています。



次のセクション2「平面性」では、壁に服がはりつけてあったりと、マネキンにおさまらないファッションの見え方を提案しました。セクション3「伝統と革新」ではシンプルなデザインですが、鏡を使っています。鏡はファッションにはなくてはならないもので、見ている人も写し合う、こちらとあちらの交わりのようなものを感じさせます。さらに、マネキンを同じ高さにして、あえて前衛的なファッションを同じレベルで見えるようにすることで、前衛的なファッションと自分たちが交じり合うような体験ができるようになっています。



セクション4「日常にひそむ物語」に展示されている作品は、普通の服にも見えるかもしれないけれど、よくよく見ていくと物語が潜んでいます。あえてマネキンの台をそれぞれ違う形にすることで、ひとつひとつの服の裏にあるストーリーを感じさせるようになっています。そして、最後は、陰翳礼讃のマネキンがまた向こう側にみえてくるような形で終わります。全部がループしてつながっていくような体験ができるようになっています。



※講演会:「建築家・藤本壮介、『Future Beauty』展を語る」を2012年8月8日(水)に開催。詳細は下記参照のこと。



■長谷川祐子

東京都現代美術館がKCIと一緒に展覧会を行うのは、1999年の「身体の夢」展、2009年の「ラグジュアリー:ファッションの欲望」展に続き3回目です。今回は海外巡回してきた展覧会を新しいバージョンとして開催し、日本ファッションの30年をみせる初の展覧会となりました。



本展の企画段階で、一番危惧されたのは、現代を、セクション4「日常にひそむ物語」をどうみせるか、ということでした。ファッション、そしてモードというものは、多様なものが現代を象徴しながら進んでいます。その中で、新しく生まれてきたものを選ぶのは、大変な作業だったと思います。



最後のセクションに登場するデザイナーたちは、今の日本のリアリティ、そして今まで(先達である日本のデザイナーたちによって)積み重ねられてきたある意味遺産を引き継ぎながら、縫製の技術や素材の選択などにおいて細やかな感性を見せています。キュレーターとして見ても、今を語る、という面で大胆なチャレンジがされた展覧会だと思います。



今回の展覧会が議論の発端になってくれるように、そして日本だけでなく、アジアの新興の国では新しいデザイナーがたくさん生まれていますが、そういう人たちも日本ファッションの大きなダイナミズムを意識しながら、本展を観てほしいと思っています。



展覧会の様子については、こちらの記事でチェック:

日本ファッションの30年をたどる大規模展レポート-ギャルソン、ヨウジ、イッセイからアンリアレイジなど



【展覧会概要】

「Future Beauty 日本ファッションの未来性」

期間 : 2012年7月28日(土)~10月8日(月・祝)

会場 : 東京都現代美術館 企画展示室3階

住所 : 東京都江東区三好4-1-1

休館日 : 月曜日(ただし9/17、10/1、8は開館、9/18は休館)

開館時間 : 10:00~18:00(入場は17:30まで)

URL:http://www.mot-art-museum.jp



■講演会:「ファッション・ショーの舞台裏:ヘアメイクの視点から」

日時:2012年8月5日(日) 午後1時~3時

会場:東京都現代美術館 講堂(地下2階)

住所:講演者:岡元美也子、計良宏文(資生堂ビューティートップスペシャリスト)

参加費:無料

申込方法:先着200名 ※申し込み不要



■講演会:「建築家・藤本壮介、『Future Beauty』展を語る」

日時:2012年8月8日(水)午後7時~8時30分

会場:日本経済新聞社 東京本社2階 SPACE NIO

住所:東京都千代田区大手町1-3-7

講演者:藤本壮介(本展展示デザイン担当)

参加費:1,000円

申込方法:事前申込制。定員(80名)に達し次第締め切り。

京都服飾文化研究財団 事務局 TEL:075-321-9221 にて受付。

※受付時間:平日9:00~17:00



【出展デザイナー】

三宅一生、川久保玲(コム デ ギャルソン)、山本耀司、阿部千登勢(サカイ)、新居幸治+新居洋子(エタブルオブメニーオーダーズ)、荒川眞一郎、太田雅貴(オオタ)、小野塚秋良(ズッカ)、大矢寛朗(OH! YA?)、勝井北斗+八木奈央(ミントデザインズ)、小島悠(システレ)、栗原たお(タオ コム デ ギャルソン)、高田賢三(ケンゾー)、高橋盾(アンダーカバー)、滝沢直己(イッセイ ミヤケ)、立野浩二(コージ タツノ)、玉井健太郎(アシードンクラウド)、津村耕佑(ファイナルホーム)、中章(アキラナカ)、長見佳佑(ハトラ)、廣川玉枝(ソマルタ)、堀内太郎(タロウ ホリウチ)、堀畑裕之+関口真希子(まとふ)、皆川明(ミナ ペルホネン)、森永邦彦(アンリアレイジ)、渡辺淳弥(ジュンヤ ワタナベ)、20471120、牧野勝弘(アスキカタスキ)、神田恵介(ケイスケ カンダ)、高島一精(ネ・ネット)、山下隆生(ビューティ・ビースト)、坂部三樹郎+シュエ・ジェンファン(ミキオサカベ)、山縣良和(リトゥンアフターワーズ)、山本哲也(ポト)、黒河内真衣子(マメ)、森英恵


※本記事はファッションプレスニュースから配信されたものです。ファッションプレスでは、ブランド、デザイナー情報、歴史などファッション業界の情報をお届けしています。

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